餘部鉄橋：百年の景観に別れ

餘部鉄橋が完成したのは明治45年（1912）、この橋の完成を以て山陰線の全線開通が実現した。爾来この橋は、山陰の名所として、全国の鉄道ファンを魅了してきた。なにしろ深い谷をまたいで聳え立ち、その上を列車が通る風景は、鉄道ファンならずとも美しく感じられたものだ。

しかし材料が鉄であるから、永久にはもたない。一世紀近くたって老朽が激しくなったために、頑丈なコンクリート橋に架け替えられることになった。そのコンクリート橋が、鉄橋の北側に隣接して完成したわけだ。写真でも、手前の鉄橋の奥に、コンクリートの台柱が見えている。

11日には、特急列車「はまかぜ」が餘部駅に臨時停車した。熱心なファンは西側からこの列車にのって鉄橋を渡り、餘部駅でさらに西に向かう列車に乗りかえて再び鉄橋を渡ったそうだ。この日乗りそこなった人には、16日に再チャレンジの機会がある。

ところで筆者がこんなことに興味を抱いたのは他でもない。晩年にいたって「鉄ちゃん」と呼ばれる鉄道マニアに囲まれて生活するようになり、鉄道にかかわるエピソードには何かと縁が深くなったのだ。

若いころには鉄道などに郷愁を感じさせられることはなかったのに、いまではそこはかとなく面白いと感じるようになってきた。スピードだけが価値あるものではないと、気づく年齢になったのだろう。