今年は広島・長崎に原爆が投下されて以来、65年目の夏を迎えるが、いつもの夏とはちょっぴり違った夏になった。アメリカのルース駐日大使が、アメリカ政府を代表する形で広島の記念式典に始めて参加したほか、パン・ギムン国連事務総長、英仏両国の臨時大使もまた式典に臨んだ。
ルース駐日大使はスピーチなど特別のことはしなかったが、それでも原爆を落とした国の代表として式典に臨んだことは、意義が大きい。アメリカは今まで、広島・長崎の式典には一貫して冷たい態度をとってきたから、これは大胆な方向転換といえる。
このことの背景には、オバマ大統領の強い意志が働いているのだろう。大統領は一昨年の春、あの歴史的なプラハ演説を行って、核廃絶への強い意志を示した。現実の政治力学はなかなかそれを許さないが、ことあるごとに、非核化への意思を示し続けている。今回の動きもそれを反映したものと受け取れる。
長崎市長が訴えたように、現実には非核化を阻むさまざまな障害がある。核保有国自体が、まだまだ核廃絶に消極的だし、インドやパキスタンなどを中心に核拡散の動きが一方にある。こうした現実をまえに、日本の菅首相は、現時点では格の抑止力に頼らざるをえないと発言している。
理想と現実との間の壁はまだまだ厚い、ということかもしれない。
ルース駐日大使は長崎の式典には参加しなかった。これについて、激しく非難する動きもあるが、フランスの臨時大使がいったように、大使が長崎に来なかったことを云々するよりも、広島に初めて参加したことに、意義を認めるべきだろう。(上の絵は、筆者が数年前にスケッチした、広島原爆ドームの様子)
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