秋興八首其一:杜甫を読む

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杜甫の七言律詩「秋興八首其一」(壺齋散人注)

  玉露凋傷楓樹林  玉露凋傷す楓樹の林
  巫山巫峽氣蕭森  巫山巫峽氣蕭森
  江間波浪兼天湧  江間の波浪天を兼ねて湧き
  塞上風雲接地陰  塞上の風雲地に接して陰る
  叢菊兩開他日淚  叢菊兩つながら開く他日の淚
  孤舟一繋故園心  孤舟一に繋ぐ故園の心
  寒衣處處催刀尺  寒衣處處刀尺を催す
  白帝城高急暮砧  白帝城高くして暮砧急なり

露が降りて楓樹の林を侵し、巫山巫峽には秋の気配がただよう、大江の波は逆巻いて天にも達し、塞上には風雲が起こって地を暗く覆う

二度にわたって菊の花を開くのを見たが、それも他日の涙の種になろう、孤舟をつないでいるのはいつでも故郷に帰ろうがため、そこここには衣を裁つ刀の用意をし始め、白帝城が高く聳える麓では砧を打つ音が聞こえ始める 


杜甫はキ州滞在中、今日に伝わる作品の三分の一に相当する430首もの詩を作った。それらの多くには、かつてのような情念の高まりや鋭い社会批判意識を見ることは少ない、そのかわり晩年に到って杜甫の心を占めるようになった、この世の中と和解するかのような穏やかな気持が述べられるようになる

秋興八首はそんな杜甫の心境が縦横に述べられたもので、キ州時代の代表作といえるものだ

一首目のこの詩では、秋の時節にあたって旅にある身を歌ったもの、季節を愛でながら、いつか故郷に帰りたいという気持ちは忘れないでいる


関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説





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