東京の各区に端を発した高齢者不明問題は、どうも泥縄式に拡大してきているようだ。当初は住民票に記載されている100歳以上の高齢者が実は所在不明という話がほとんどだったが、今度は、戸籍上は生存しているが、実際は生きているかどうかわからないといった話が全国で聞かれるようになった。
まづ大阪市が、戸籍上120歳以上の市民5千人以上が、いまも生存していることになっており、その中の最高齢者は153歳だと発表した。153歳といえば幕末の安政五年に生まれた勘定だ。
ところがその直後、山口県防府市では文政7年生まれの186歳の人の戸籍が残っていると発表した。このほか滋賀県甲賀市では182歳、秋田県酒田市では173歳の人の戸籍が見つかった。さらに、120歳以上の人の戸籍が、全国の方々で大量に残っていることが、次々と判明した。その数は、数十万人規模に達する可能性さえある。まるで戸籍処理の杜撰さを自治体間で競い合っているようだ。
どうしてこんなことが起こったのか。本人が死んでしまったのにかかわらず、なにかの理由で戸籍の記載から抹消されなかったことが原因だ。本人が死んでも、その後始末をしてくれる人がいなかったという、深刻な事情が介在しているのだろう。
大阪市などは、戦争末期の空襲で大量に死んだ人の戸籍がそのまま放置されたことなどが、背景にあったのではないかと分析している。だが安政5年に生まれた人が、昭和の戦時下まで生きていたことは考えにくいから、やはり死者をきちんと弔う人がいなかったために、こんなことが起きたのだろうと思わせるのだ。
ところで、この死者たちは日本の平均寿命にもカウントされていたのだろうかという、素朴な疑問が湧く。多分、その人たちは、日本人の平均寿命に何らかでも、かかわりを持つことはないと思うが、それにしても、日本の人口統計のずさんさは指弾されざるをえないだろう。
今回の騒ぎがもとで、世界に冠たる日本人の平均寿命も、いくばくかは割り引いて見られるようになるかもしれない。とにかく長寿社会日本にとって、不名誉なできごとだった。
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