杜甫の七言古詩「縛鶏行」(壺齋散人注)
小奴縛鶏向市売 小奴鶏を縛して市に向って売る
鶏被縛急相喧争 鶏縛さるること急にして相ひ喧争す
家中厭鶏食虫蟻 家中鶏の虫蟻を食ふことを厭ひ
不知鶏売遷遭烹 鶏の売らるれば遷た烹らるるに遭ふを知らず
虫鶏於人何厚薄 虫鶏人に於て何の厚薄あらん
我叱奴人解其縛 我奴人を叱って其の縛めを解かしむ
鶏虫得失無了時 鶏虫の得失了る時無し
注目寒河倚山閣 目を寒河に注ぎて山閣に倚る
小僧が鶏を縛って市場に売りにいく、縛られた鶏は互いに争いあう、家のものが鶏の虫蟻を食うことを厭って売りに出させたのだ、その鶏も売られれば煮られてしまうのを知らぬのだろうか
虫と鶏とどちらが大切ということもない(平等なのだ)、そこで自分は小僧を叱って鶏の縄をほどかせてやった、鶏を助けるのがよいのか虫を助けるのがよいのか損得は論じられぬ、山閣に倚りながら茫然と目を河のほうに注ぐのみなのだ
キ州時代の作。この時代の詩の中では、変わった風格が目を引く。風刺でもなく、怒りでもない、自然の摂理に対する脱帽といった感情が盛られている。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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