英紙エコノミストの最近号が、日本の近未来を占う記事を載せている。Into the unknown By Henry Tricks 書かれていることはみな、日本人自らがすでに知っていることばかりだが、知っていながら対策を取ろうとしないことについて、強烈な警告を行っている。そこが読んでいて、焦りを掻き立てられるような気分にさせられる。
著者は夕張の没落をとりあげ、そこから日本全体の未来の姿を予測することから始める。
まず人口の動向だ。日本の高度成長を支えてきた最大の原動力が生産人口の拡大であることはいうまでもないが、戦後50年の間に実に3700万人も増大している。これが1996年をピークに減少に転じ、2050年には1950年の水準を下回る数字になるだろうと予測される。人口全体についてみても、1億2700万人ある現在の人口が3800万人も減少し、人口の4割が65歳以上という超高齢化社会になるだろうと予測される。
上の図から読み取れる通り、かつてはピラミッド型だった人口構造が、タコのようなかたちになる。タコといっても西洋ダコのことをさしていて、頭でっかちな形をいう。つまり老人の比率が異常に高いという意味だ。
この急速な高齢化は社会・経済構造に甚大な影響をもたらす。生産人口の減少と非生産人口を養うための年金コストの上昇だ。国全体の生産力がますます減少し、国庫の収入が劇的に減っていくのに、社会保障のためのコストは、そんなことはお構いなしに増えていく。これでは早晩国の破産も逃れがたい。
こうした悪循環の可能性は、もはや目先に迫っている。2012年には団塊の世代のフォアランナーが65歳に達するが、これを契機にして、日本の社会保障費は、かつてない規模に膨れ上がるだろう。膨れ上がる一方の費用に対して、それを賄うための方策を講じなければ、会計が成り立つわけがない。
少子高齢化の傾向は、日本に限らず先進国共通の問題だ。だが日本の場合にはその進行ぶりが極端すぎる。その結果、世代間に深刻な対立が生じるようにもなるだろう。
いまや団塊の世代の子供の世代が社会の土台を担う年齢になってきたが、彼らは親の世代を養うために巨額の負担を迫られるかもしれない。しかも自分たち自身はそうした恩恵にはあずかれない可能性が強い。これでは何のために生きているのかもわからなくなる。彼らの怒りは深刻化せずにはいないだろう。
以上は最悪のシナリオだ。このとおりになるとは限らない。だがそのためには日本政府も国民も相当の覚悟がいるだろう。
ひとつには少子高齢化の進行を緩めることであり、少しでも子供を産んで育てやすい社会を作っていくことだ、もう一つは国全体の生産性を上昇させていくことで、そのためには諸外国、とりわけアジア諸国との緊密な連携が必要だろうと、著者はいう。こうした努力を怠れば、日本はいづれ沈没を余儀なくされ、「沈みゆく太陽」の国だなどと揶揄されるようになるだろう。(上のイラスト:Economist/Jon Berkeley)
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