今場所の魁皇はどこか違う。あの白鳳の連勝記録をとめた稀勢の里を三日目に破って以降連勝を重ね、一敗のまま優勝争いにも絡んでいる。そんな好調ぶりを、幸運の女神も嘉し給うたか、十一日目の昨夜には、信じられないような、奇跡の一勝を授け給うた。
この夜の土俵で鶴竜と対戦した魁皇は態勢を崩して守勢にまわり、相手に背中を見せた。ところが鶴竜はこの絶好のチャンスを生かしきれないばかりか、自分の勢いを制御できずに自爆、魁皇の背中にもたれかかるようにして土俵に転んでしまったのだ。
魁皇にとっては、思いがけない展開、てっきり負けたと思っていたのに、背中を振り向いたら、相手が勝手に転んでいたというわけだ。それでも決まり手は引き落とし、あくまでも魁皇が技を仕掛けたという形になっていた。相撲には自爆という決まり手はないからだ。
これで十勝一敗、二桁勝利は六年ぶりのことだ。しかも優勝争いにまで加わっているとあっては、魁皇の地元である九州のファンは、大喜びだろう。
満身創痍といわれながら、引退せずにこれまでがんばってきたのは、外国人全盛の各界にあって、日本人力士の意地を見せるためだ。その意地にこたえて、新しい世代の登場を願いたいものだ。
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