白鵬の強さの秘密:最強への挑戦

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横綱白鵬の連勝を意識してか、NHKが九州場所の前から密着取材を行い、その強さの秘密を解き明かしていた。題して、横綱 白鵬 "最強"への挑戦。

NHKは、まづ白鵬の身体能力の高さを、科学的な測定技術をもとに証明していた。相撲取りの命とも言うべき筋力についてみれば、白鵬の筋肉のつきかたは、およそ理想的な状態に達している。単に筋肉のつき方が豊かというのではなく、無駄がなく、美しいとさえいえるほどの見事さなのだ。

ついで、全身反応能力の高さだ。相撲は一瞬がものをいうスポーツだから、相手の動きに全身で反応するスピードがものをいう。もたもたしていることは許されないのだ。ところが白鵬の全身反応能力は、相撲取りの中では群を抜いている。むしろ、世界でも超一流のスプリンターの反応速度にも負けない。

こうした身体能力の高さは、厳しい稽古の積み重ねからもたらされたものだろう。だが相撲は身体能力が高いだけでは十分ではない。心の能力とも言うべきものが、試されるスポーツでもある。一瞬の心の隙が手痛い敗北につながるのだ。

白鵬はもともと心の迷いに弱いところのある力士だった。大関取りや綱とりがかかった場所で、何度となく敗退してきたが、それは心の状態に原因があった。白鵬は大勝負の一番を前にすると、心が萎縮して、身体能力を発揮できないでいた時期があったのだ。

白鵬は、その弱点も絶え間ない努力を通じて乗り越えてきた。身体の動作をルーティンと呼ばれるようなパターンに分解し、それを毎日機械的に反復することによって、心に余分な隙が入り込まないように自己コントロールする、そのことによって、勝負に集中する態度を身につけたのだ。

白鵬の快進撃の背後には、心身にわたるこのような自己改造の努力があった。

逆に言えば、今場所で白鵬が無念の一敗を喫したのは、上述したような自己コントロールが一瞬乱れたことの結果だった。稀勢の海とのあの運命的な勝負に際して、白鵬は勝負が始まる前から、調子が狂っていた。普段なら決して見ようとしない、直前のほかの力士の取り組みを見たり、決まったように反復していた動作を省いたりしたことに、それは伺われた。勝負が始まってからも、立合いこそうまくいったものの、一発張り手を食らうと、躍起となって張り返そうとするなど、心に乱れが生じた。その乱れが敗北につながったのだと、後になって白鵬自身が認めた。

どんなにすごい人物でも、心の中に迷いのかけらもないような人間は存在しえないかもしれない。そんな人間がいたら、それは超人というべきだろう。白鵬がついに負けたのも、いつかは負けるのが人間の宿命だからかもしれない。

白鵬のえらいところは、一敗を喫しても、そのことで崩れることがなかったことだ。あの双葉山は連勝記録が止まったとき、つづいて三連敗を喫した。大鵬も連勝がストップを食った場所は休場に追い込まれた。

だが白鵬は、この一敗を教訓にして自分の相撲を取り戻し、ついに五場所連続優勝という偉業をなしとげた。

筆者は、そんな白鵬のひたむきな姿に、熱い拍手を送りたい。(上の写真は、九州場所優勝決定戦で、豊の島を送り投げで破る白鵬:報知新聞提供)


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このページは、が2010年11月29日 18:52に書いたブログ記事です。

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