国家機密と表現の自由:ウィキリークスの問いかけ

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ウィキリークスが世界中に与えた衝撃は甚大だったようだ。影響が及んだ各国の政府は、外交上の対応に大わらわになる一方、ウィキリークスの影響を封じ込めることに躍起になっている。

ウィキリークスにサーバーを提供しているインターネット事業者に圧力をかけたり、いうことを聞かないサーバー企業に対してサイバー攻撃を仕掛けたり、ウィキリークスの創始者アサンジュその人を、何とか理屈をつけて犯罪者扱いするなど、常軌を逸した反応を示している。

なかでも、サーバー会社への圧力はすさまじいようだ。アメリカのサーバー会社アマゾンなどは、サイバー攻撃を受けてほかの利用者に迷惑が掛かっていることを理由に、ウィキリークスへのサーバー提供を停止したが、これが政府の圧力に屈した結果だということは、誰もが疑わないことだ。

アサンジュその人は、今や各国政府からお尋ね者扱いにされ、その上、ウィキリークスとは直接関係のない罪状を理由に、国際手配されている有様だ。氏はいまのところはそうした圧力に屈する素振りは見せず、身を隠しながら、情報のアップロードを続けている。

アサンジュの流す情報は、各国政府とりわけアメリカ政府にとっては、都合の悪いことのようだ。アメリカ政府は、何とかやめさせようとやっきになっているが、今のところ効果はない。

日本でも、尖閣諸島問題に関して、秘密扱いの映像がネットに漏れ出たことがあった。その時、いったんネットに出た映像は、隠ぺいすることが不可能だということを、多くの人が知った。直接関係する部分をふさいでも、膨大なコピーまではふさぎきれないからだ。

それ故、ウィキリークスの情報をネット上から消去しようとする各国政府の努力は全く意味がないのであるが、それでもアメリカをはじめ各国の政府が、その無駄な攻撃をするのはどういう理由からか。

各国の政府は、ウィキリークスの行為が許されるものではないと、一般の市民に思い知って貰いたいのだろう。放置しておくよりは、無駄なことでもやることのほうが、宣伝効果は大きい。その宣伝を、声を出して行うことで、各国の政府は、秘密にしておくに値する情報まで、ウィキリークスは漏洩させているのだという、ごく当たり前のことを理解してもらいたいのだろう。

いまのところ、そうした考えは、一般の人々に理解されているようだ。大多数の人が、表現の自由と国家の機密を天秤にかけ、時には国家の機密が優先することもあると答えているからだ。


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このページは、が2010年12月 5日 19:49に書いたブログ記事です。

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