北朝鮮の次の世代の独裁者と目されるキム・ジョンウンが、北朝鮮人民向けに自分なりの政策綱領をアピールしたそうだ。その内容を聞かされたものは、北朝鮮人民ならずとも、しびれたことだろう。
キム・ジョンウンが厳粛に宣言した高遠なる目標とは、北朝鮮人民の生活水準を1960年代の水準にまで回復させ、北朝鮮建国の祖キム・イルソン同士が掲げた目標「白米を食べ、肉のスープを飲み、絹の服を着て、瓦屋根の家に住む』を、真に成し遂げることである。
実はこの目標は、キム・ジョンウンの父親キム・ジョンイルも最近、強調していたところだ。
キム・ジョンイル将軍は、今年の一月におこなった演説の中で、北朝鮮はいまや、軍事的には強大になったが、国民生活のクヲリティに関しては問題が多いとして、「永遠の主席(キム・イルソン)は、人民が白米と肉の入った汁を食べ、絹の服を着て、瓦屋根の家に住めるようにならなければいけないと言った。しかし、わが国はまだこの目標を達成できていない。できる限り短期間のうちにこの問題を解決し、永遠の主席の遺志を実現したい」と述べたのだった。
キム・ジョンイルとキム・ジョンウンの父子が、そろってこんなことをいったのにはわけがありそうだ。
2012年は、金王朝の高祖キム・イルソンの生誕百年にあたる年だが、その記念すべき年を北朝鮮人民にとって特別の年にしたい。そんな思いを込めて、北朝鮮指導部はその年を「強盛大国の門を開く年」に指定し、北朝鮮人民が一致団結して国力強化を目指すべきだと宣伝している。
そこでキム・ジョンウンも、後継者としての地歩を固めると、「過去には食糧がなくても弾丸はなければならなかったが、現在は弾丸がなくても食糧がなければならない。」と言い出したわけなのだろう。
しかし、これが一国の指導者の吐く言葉かと、子供でもあきれる果てるお粗末ぶりだ。21世紀の現代社会に生きる人々に向かって、50年前の大昔にタイム・スリップしようというのだから、まきぞいにされかねない北朝鮮人民も、不平がなかろうでもないだろう。
だが、こんなささやかな希望でも、北朝鮮人民にとっては、高遠な理想であり続けるかもしれない。キム父子のやっていることを見れば、この先いよいよ孤立して、どんづまりになり、明日の米にも事欠くような事態に陥るだろうことは、誰の目にも明明白白だろうから。
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