ロシアの二頭政治:プーチンとメドヴェージェフ

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プーチンのカリスマ的人気は依然衰えず、いまでも70パーセントにのぼる支持率を誇るというから、次の大統領選挙で再び大統領職に返り咲くのは間違いないと思われている。メドヴェージェフも、プーチンがそうしたいなら、自分はあえて対抗しないという態度を示しているようだ。

だが今後のロシアの行く末を考えると、プーチンがかつてと同じような政治運営を出来るかどうか、はなはだ心もとないようだ。プーチンがこれまで国を指導してきた2000年代が、上り坂の時代だったのに対して、今後は下り坂になることが予測されている。それはプーチンにとって、国民の統治の上で必要だった政治的資源が枯渇していくことを意味する。

プーチンを支えた政治的資源とは底堅い経済力である。右肩上がりの国民所得の伸びが、国民各層の間に潤沢に行き渡り、それが政治に対する不満を押さえ込んだ。ロシア国民は腹が満たされ、ささやかな希望がかなえられている間は、多少の腐敗や機会の不公平に対して寛容であることが出来る。

だが、世界的な信用不安の影響がロシアをも巻き込み、ロシア経済は従来のような底堅さを維持できなくなった。その最も大きな要因は、石油と天然ガスに極端に依存した経済構造の特異性にある。

すでにソ連時代においてもそうだったと分析されているが、ロシアは石油資源からあがる収入に依存するあまり、バランスのとれた経済の構築を怠ってきた。設備投資や社会資本の整備には、ほとんど無関心といってよいほど、金をさくことがなかった。

こうしたゆがんだ経済政策のツケが、今後のロシアに回ってくると予想される。何しろ成長実現のための王道ともいえる政策をしないのであるから、ロシア経済は自立的な発展のインパクトを欠いている。石油という魔法の水に依存して暮らしているのだから、国全体が不労所得で支えられているようなものだ。

国民は、これまでのようには、経済的な余剰の分け前にあずかることができなくなるだろう、分け前が少なくされれば、勢い不公平や腐敗に対しては敏感になるというのが、自然の勢いだ。

プーチンは基本的には旧いタイプの政治家だ。法治主義ではなく人治主義、民主的な手続きによるのではなく、顔のつながりを通じて統治するタイプの政治家だ。そうした政治家にとって、国民を統治するためには巨大なエネルギーが必要になる、そのエネルギーとは政治的資源のことをいう。その資源が、上述したように枯渇する趨勢の中では、国民の統治もなにかとやりにくくなるだろう。

だからといって、メドヴェージェフならうまくいくかというと、なんともわからないところがある。メドヴェージェフは大統領になって2年を過ぎ、そろそろ独自色を出してもよい頃なのに、いまだにプーチンから自立していないフシがある。

いままで、メドヴェージェフは大きな政治的失敗をしないできたが、それは、まともなことをやろうとしなかったからだと揶揄されるほどだ。

それでもメドヴェージェフは、プーチンにないものを持っているといわれることもある。それは法治主義の尊重を始め、西欧的な価値観への傾斜だ。

ロシアが今後、民主的な資本主義国家として発展していくためには、西欧並みの法治国家になることが求められる。その点、ロシアの未来にとって、メドヴェージェフのほうがプーチンよりましだということはいえる。

しかしメドヴェージェフが、言われるような西洋かぶれであり、また本物の民主主義者なのか、ほとんど検証されていない。先ほど言ったように、これまでまともなことをしたことがないのだから。


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このページは、が2010年12月17日 20:46に書いたブログ記事です。

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