新宿二丁目から九段へ

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筆者が籍を置いている事業所は、新宿二丁目にオフィスを構えていたが、この年末に、都合があって九段に移転した。移転といっても仮移転で、一年後には牛込の曙橋駅近くに再移転しなければならない。

新しいオフィスは、市ヶ谷駅を下りて麹町側に徒歩数分のところにある。九段といっても番町の延長のような街だ。講談「番町皿屋敷」の舞台となった帯坂を上り、左手に曲がったところにある。目の前にはルクセンブルグ大使館が、また近辺には日本棋院の本部を始め、全国的な団体のオフィスが並んでいる。いままでいた新宿二丁目とは全く違った雰囲気の街だ。

新宿二丁目は、かわった雰囲気の街だった。旧甲州街道の内藤新宿があったところで、いわゆる赤線地帯が展開していた過去を持つ。その後、ホストクラブが林立し、エネルギーをもてあましたマダムたちの息抜きの場所だったりしたが、最近はゲイ・タウンとして、ゲイのカップルが集まるようになった。筆者のいた事業所は、その一角に立っていたので、そういう人たちの姿を日常的に目にしていたものだ。

特に深夜になると、大勢のゲイ・カップルがそれこそ東京中から集まってくる。彼らは仲良く手をつなぎながら、甲州街道やら、それと交差する路地のいたるところを闊歩し、夜の街があたかも不夜城のような観を呈する。筆者も機会があって、そうした光景を目にしたことがあるが、一種言うに言われぬ感覚を覚えたものだ。

新宿二丁目はまた、ホームレスにやさしい街だった。街の中核部にある小さな公園を根城にして、数人のホームレスが暮らしていた。その中には女のホームレスもいて、冬の寒さも夏の暑さもなんのその、逞しく生きていた。飲食店の中には彼らに料理の食べ残しを施していたものもあったようだ。

だがあるときを境にホームレスの数が激減した。どうやらホームレス同士のいさかいが起きて、殺傷事件になったようで、それがきっかけで、この場所にいられなくなったものが結構いたようなのだ。

風俗的な匂いが蔓延する街なので、街歩きをすれば退屈することがない。また飲食店も結構うまくてしかも安いものがあり、昼飯時にはいろいろな店の味をかわるがわる楽しむことができた。

新たにやってきた街には、ホームレスは一人もいない。街並は整然として、新宿二丁目のような猥雑さとは無縁だ。

筆者は腰を落ち着けるとまづ、うまい昼飯を食わせる店を探して歩き回った。それらしき店は、市ヶ谷の駅から麹町方面に向かう日本テレビ通りぞいや、靖国通り沿いに多く展開している。そば屋、ラーメン屋、魚屋、スパゲッティ屋、中華料理屋、釜飯屋、カレー屋など、ひととおり揃っている。さすがは都心のオフィス街だ。だが新宿二丁目と比較して値段が高いのが気になった。また舌がとろけるほどうまい味の店もないようだ。

そのうち、知人が訪ねてきた。引っ越したことを知らなかったので新宿のほうに行ってしまったよと、筆者に向かって不平をいう。筆者は廃屋になった建物の様子について訪ねた、すると今までは遠巻きに遠慮していたホームレスたちが、我が物顔に敷地内に侵入していたそうだ。


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このページは、が2010年12月20日 19:10に書いたブログ記事です。

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