ロシア海軍 強襲揚陸艦を導入:対日本防衛力強化がねらいか

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ロシア海軍がフランス製のミストラル級強襲揚陸艦(上の写真:週刊オプイェクト)4隻を導入すると伝えられた。24日に行われたメドヴェージェフ大統領とサルコジ・フランス大統領との電話会談で決定されたそうだ。

強襲揚陸艦とはヘリコプターや戦車など攻撃に必要な装備を、大量かつ迅速に戦場に運ぶことを目的としたものだ。ミストラル級強襲揚陸艦の場合、10機以上のヘリコプターと70台もの戦車を一時に運ぶ能力を持っている。ロシア海軍はこれを、太平洋艦隊に優先的に配備する意向だと伝えられている。

太平洋艦隊は極東とその先にあるアメリカを主な対象としている。ロシアにとって極東とは無論日本をイメージした概念だ。今この時期にその日本を対象に、攻撃力に力を入れようとするには、相当の訳があるのだろう、誰もがそう考えたくなるところだ。

実際のところ、現在の日ロ関係はかつてなく悪化している、こうした時期に軍備を補強しようとするのは、ごくあたりまえの考え方ともいえる。

だが、週刊オプイェクト http://obiekt.seesaa.net/ の記事によれば、ロシア軍はすでに2008年の時点で、フランス製のミストラル級強襲揚陸艦導入を決定していたそうだ。だから今回の導入決定は、既定路線に沿った動きだといえる。急に振って湧いた話ではないので、日本側も過剰に反応することはない。

それでもこの動きが、日本を主要な敵と想定して展開されていることは間違いない。ロシアの太平洋艦隊は、ソ連崩壊後ほとんど補強されることなく、主力艦船の老朽化が目立っていた。強襲揚陸艦についても、従来三台あったものが、今では一台もまともに使える状況ではないという。

ロシア側が、これまで太平洋艦隊の戦力を劣化するままに任せていたのは、日本は脅威ではないという思惑が働いてきたからにほかならない。つまり日本は甘く見られていたか、あるいはもう少し好意的に見て、友好的な国とみられていたのだろう。

だがここにきて、日露両国の関係は、急速に悪化している。すでに2008年の時点で合意されていた事項とはいえ、ロシア側がこの時点で太平洋艦隊の強化に踏み切ったことの意味は、十分受け止めておく必要がある。

それにしても、メドヴェージェフのやり方には、日本の政治家の真似のできないところがある。2008年の時点では、フランスも国際社会の抵抗を無視してまで、ミストラル級強襲揚陸艦をロシアに売り込むことにためらいを感じただろう。だが先般のNATOとロシアとの歴史的若いに象徴されるように、ロシアは今や西欧諸国のよき隣人として認められるようになった。

メドヴェージェフはこうした歴史的な事情を自分にとって有利なカードとして利用し、日本に揺さぶりをかけてきているとも考えられる。


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