アップルといえば、一時期はIT産業のフォアランナーとして全盛を誇り、そのブランドであるマックはコンピューターと同義語だったほどだが、10年前にマイクロソフトに追い抜かれてからは、もはや過去の企業といわれてきた。そのアップルが劇的な復活を果たし、マイクロソフトを追い抜いて、再びIT産業の首位に返り咲いた。
その要因としては、今年(2010年)の春にリリースしたタブレット端末iPadの爆発的な売れ行きがある。これとあわせて、iPhoneもスマートフォン市場を席巻し、またアップル・テレビも売り上げを伸ばすなど、投入する製品がことごとくあたっている。いまやヨーロッパの人びとの間では、アップルの製品を持つことが一種のファッションになっているほどだ。
この結果アップルの株価は短期間の間に上昇し、いまやエクソン・モービル、ペトロ・チャイナについで世界第三位の企業価値を持つに至った。
英誌フィナンシャル・タイムズは、アップルの復活を遂げたCEOのスティーヴ・ジョブス Steve Jobs 氏を、今年のPerson of the Year に選び、「現代のビジネス史における最大のカムバックを果たした」と称えた。またオバマ大統領も、ジョブス氏の成功を、自由市場の長所を示す好例だと賞賛した。
ここ数年の間、インターネット市場はマイクロソフトが独占的な地位を誇ってきた。基本ソフトといえはWindowsが圧倒的だった。そこにアップルは風穴を開けた形になる。これは健全な市場の発展にとって、望ましい事態だといえる。
今後のアップルに課された課題は、顧客を失望させないことだといわれる。ところが気になることに、アップルは電子書籍の配信をめぐって、たびたび著作権侵害問題を引き起こすなど、姿勢を問われるような事態が頻発している。
企業規模があまりにも急速に拡大した結果、システムチェックが甘くなっていることの現われだと推測される。アップルが今後健全な発展を遂げていくためには、こうした問題をスマートにクリアしなければならぬ。
ところで日本市場では、従来型の携帯電話がいまだに主流を占め、アップルの製品はおろか、スマートフォンでさえ普及が遅れている実態がある。だが日本の消費者も次第に、アップルの魅力に取り付かれるようになるだろう。(上の写真はアップルの共同創業者でCEOのジョブス氏:AFP提供)
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