先稿「日本は沈み行く太陽か」の中で、イギリス人ジャーナリスト、ヘンリー・トリックス Henry Tricks 氏の悲観的な日本論を紹介した。日本が抱えている問題について検証し、今のうちに手を打たないと、日本は近い将来に沈んでしまうと警告したものだ。
氏は日本がいま抱えている問題を、ジャパン・シンドローム Japan Syndromeという言葉で表現している。一言で言えば、少子高齢化の傾向が止まらず、人口が劇的に減少していく事態である。それも生易しいペースではない、それこそあっという間に人口が減少し、それが国力の弱体化をもたらし、やがては国としての体をなさなくなる恐れさえあるというものである。
こんなに急速な人口の減少は、先進諸国がいままで経験したことがないものだ。今までの歴史において、一国の人口がドラスティックに減少したのは、戦争、疫病、食料不足といった要因が働いた場合だけであった。それが、日本の場合には、外在的で強烈な要因が働いているとは言えないのに、ずるずると人口が減っていく。
トリックス氏は、日本の抱えるどんな問題が人口の減少を加速化させ、それが社会構造にどんな影響をもたらすか、慎重に見極めたいといっている。
その氏が先日NHKの報道番組に出場し、人口の減少によって、地域社会がどのように変容しているか、レポートしていた。彼は、地方の農村部のみでなく、長崎のような都市部でも、人口の減少によって、社会の崩壊現象が生じているのを目撃し、ショックを受けていたようだ。
氏は、人口減少の影響をまともに受けている人びとにインタビューを行っていた。そのうち経済界の人びとには、この傾向をどう受け止めているか聞いていたが、帰ってきた返事が他人事を語っているようで、びっくりしたような表情をしていた。問題を問題として受け止めるのではなく、そこから目をそらそうとする姿勢が見られたからだろう。
人口が減って労働力が足りなければ、たとえば外国人を雇うとか、もっと知恵を働かせるべきなのに、日本人はなぜそうした努力をしないのか、これではずるずると流されてしまうのも当然だ、そんな風に受け止めているようだった。
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