千のなでしこ Si mille oeillets:ピエール・ド・ロンサールのソネット

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ピエール・ド・ロンサール「カサンドラへのソネット」第29番「千のなでしこ」Si mille oeillets(壺齋散人訳)

  千のなでしこ 千のユリを抱きしめよう
  両腕をしっかりとからませながら
  蔓のツルが木の枝を
  抱きしめるよりもっと強く

  もう憂いに沈んだ顔は見せまい
  喜びにあふれた顔を見せよう
  日向よりも日陰を愛そう
  それもみな あなたを思ってのことなのだ

  あなたの後を追いかけて空を飛ぼう
  でもあなたの後姿がわたしの眼を欺き
  わたしの喜びを妨げることもある

  あなたはわたしの幸福のさなかで逃げていく
  虚空の中に消えていく稲妻のように
  風に吹き払われる雲のように


「恋愛集」Les Amours 1552 所収。千という数字はフランス人好みの数字、おびただしいというイメージを定着させるときによく使われる。ここではわたしの愛は、数字にたとえれば数えることができないほどおびただしいものだ、との思いを込めている。


Si mille oeillets, si mille liz j'embrasse
Pierre de Ronsard

  Si mille oeillets, si mille liz j'embrasse,
  Entortillant mes bras tout à l'entour,
  Plus fort qu'un cep, qui d'un amoureux tour
  La branche aimée, en mille plis enlasse :

  Si le soucy ne jaunist plus ma face,
  Si le plaisir fait en moy son le jour,
  Si j'aime mieux les Ombres que le jour ,
  Songe divin, ce bien vient de ta grace.

  Suyvant ton vol je volerois aux cieux :
  Mais son portrait qui me trompe les yeux,
  Fraude tousjours ma joye entre-rompue.

  Puis tu me fuis au milieu de mon bien,
  Comme un éclair qui se finist en rien,
  Ou comme au vent s'évanouyt la nuë.


関連サイト:フランス文学と詩の世界





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