オバマ大統領の一般教書演説 State of the Union Address

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オバマ大統領の今年(2011年)の一般教書演説 State of the Union Address は、大統領が現在置かれている政治的状況を反映したものとなった。(上の写真:NBC)

昨年の中間選挙の結果議会の構成は共和党優位となり、日本と同じようなねじれ現象が現出した。そのため何事も議会に気兼ねをしながら政権運営をしなければならないのは、日本の菅首相と同じだ。その議会の多数派たる共和党は、オバマの「大きな政府」路線に拒否反応を示し、真っ向から対決する姿勢をとっている。

こうした政治状況の下では、2008年の大統領選のようには対立姿勢を前面に出すわけにいかない。共和党の意向にも一定の配慮を示しながら、民主党政権らしい政策をいかに進めていくか、演説にはそうした悩ましい選択肢が盛り込まれていたようだ。

オバマ大統領は、社会保障、メディケア、ガン・コントロール、移民政策といった対立案件については、つっこんだ議論を避けた。そのかわりに、国民の融和といった抽象的な理念に訴える場面が多かった。

具体的な政策に言及した部分では、政府の赤字を縮小させるために、今後5年間、内政部分の支出停止や国防費の削減を図るとした点が印象的だった。だが一方では、必要な投資に言及することも忘れなかった。

投資を支える理念は、今後著しく変化していく世界にあって、引き続きアメリカがリーダーシップを発揮していくためには、必要なインフラの整備が欠かせないというものだ。交通網や通信網を整備し、インターネットの普及に必要な投資を行い、人材を育成するために教育を充実させる、こうすることでアメリカ経済は活気を持ち続け、雇用も創出することが出来る。

こうしたオバマ大統領の見解に、共和党は真っ向から対立する姿勢を崩さなかった。代表して反論演説を行ったポール・ライアン議員は、オバマの政策は、アメリカの財政を破綻に導くと、厳しく批判した。いまや財政健全化は important のレベルを超えて imperative なレベルに達しているというわけだ。

ところで、民主、共和両党対立の象徴的な事件ともいわれるアリゾナの銃乱射事件について、オバマ大統領は一言も触れなかった。そのかわりに銃弾に倒れたギフォーズ議員の同僚たちが彼女のために席を用意し、それぞれの胸に黒と白の模様のリボンをつけ、沈黙のパフォーマンスを行った。


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