杜甫の五言律詩「江漢」(壺齋散人注)
江漢思帰客 江漢 帰るを思ふ客
乾坤一腐儒 乾坤 一腐儒
片雲天共遠 片雲 天は共に遠く
永夜月同弧 永夜 月は同じく弧なり
落日心猶壯 落日 心は猶壯んに
秋風病欲蘇 秋風 病は蘇えらんと欲す
古来存老馬 古来老馬を存するは
不必取長途 必ずしも長途に取らず
江漢をさまよいながら帰郷の念にとらわれている自分は、ただのつまらぬ学者にすぎぬ、天の片隅に浮かぶ雲のように取り留めもなく、永夜の三日月のように心細い身だ
だが落日を受けて尚盛んに、秋風に病も回復しようとしている、古来老馬を捨てずにとっておくのは、必ずしも長途のためばかりではない
江漢は長江と漢水、華南地方をさす、これに対して杜甫の故郷は華北地方だ。杜甫は、故郷から遠く離れた地に迷い込んで、激しい望郷の念に駆られている人間の気持ちをこの詩に込めたのだ
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
コメントする