朝日新聞の調査によれば、活動実績のない休眠中の宗教法人が激増しているそうだ。全国18万2千件余りの宗教法人のうち、義務付けられている活動報告を提出していないものが2009年末の時点で1万6750件あった。これは2004年時点の8千件の2倍以上、2008年の1万3400件の25パーセント増しだ。
背景には過疎化や後継者不足などによって、法人を運営すべき人がいなくなっている実態がある。こうした宗教法人は「不活動宗教法人」として、自主的な解散や他の宗教法人との吸収合併を勧告する権限が文化庁に与えられているが、進んでいないのが現状だ。
一方で、休眠状態の宗教法人が売買の対象になっている実態があるという。宗教法人は代表役員の名義を書き換えるだけで事実上所有権が移るので、売買の対象になりやすいのだ。
宗教法人は税法上の得点が与えられている。これに財産を寄与すれば、そこからあがる収益にも税法上の特典が受けられる。これに目をつけて、買い取った宗教法人に自分の財産を寄贈したことにし、課税を免れようとするものが絶えない。死後に相続税を課せられることがないのも魅力だ。こんなことから実質的な脱税の手段として注目されているわけだ。
現在、公益法人については改革が進められ、公益性の低いものは一般法人になるよう方向付けられているが、宗教法人は対象外だ。
恐らく宗教に対する関与をできるだけ差し控えようとの配慮が働いた結果だと思われるが、それにしても、宗教法人が脱税の温床に使われるようでは、座視しているわけにはいなかいだろう。
宗教法人に活動実績を報告させる今の制度は、オウム真理教事件の教訓を踏まえて取り入れられたものだが、それは宗教法人が反社会的な方向へ走るのをチェックするためのものであって、脱税等の不法行為をチェックするためのものではない。
やはり、上述の実態を踏まえて、適正なチェックシステムと不法行為の予防措置を考えるべきときだろう。
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