アリ塚を中心に展開する生態系:ブラジル・セラード

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NHKスペシャル「ホットスポット:動物たちの最後の楽園」第二回目はブラジルのセラードと呼ばれる草原地帯が舞台だ。

このシリーズの導入篇では、案内役の福山雅治さんが、不思議な光に包まれたアリ塚の集落を紹介していたが、このアリ塚がセラードの主人公だ。というより、面積が日本の国土の5倍もある広大な草原地帯に、それこそ延々としてアリ塚が、それもアリ塚だけが連なっているのだ。(上の写真:NHK)

とりわけ乾期には、地面が乾ききって草もろくに生えないから、アリ塚だけが風景を限っているといえる。樹木の影も見えず、哺乳類の姿もほとんどみえない。見渡す限りアリ塚が連なっているだけだ。

この不毛の草原地帯に生息しているのは、すべてアリ塚に縁のある生き物だ。アリを餌にしているアルマジロと大アリクイ、アリ塚の中を巣にしているフクロウとアリツカゲラ。これらはアリ塚と共生するようにして生きてきた、だからアリを食べるにも一時に食い尽くすような食べ方はしない、すこしづつ食べることによって、再生を促すようにしている。共生と呼ぶにふさわしいあり方だ。

地上に巨大なアリ塚を作るのがシロアリだとすれば、ハアリは地下に大きな巣を営む。そこにアリたちは細切れにした草の葉をせっせと運び、それを発酵させて茸を養っている。つまりこのアリは農業を営んでいるというわけだ。

ハアリの巣の上にはロベイラという木が生える。その実を狼が食べにやってくる。ロベイラの種は消化されずに狼の糞と一緒に排泄され、それをハアリが巣の中に運んで茸の餌にする。種の一部は芽を出してアリの巣の上に実をならすというわけだ。すべてが見事な循環に組み込まれている。

かつてはこの草原にも多くの種類の生き物がいた。ダチョウのような形をした巨大な飛べない鳥、クリプトドンという巨大なアルマジロ、メガテリウムという体長が5メートルにも達する巨大なナマケモノなどだ。それらは1万年前までに絶滅した。

いまのこの草原も、だんだんと消えつつあるという。整地されて畑に変わっているのだ。日本の国土の5倍相当あった草原地帯は、今では東京23区ほどの面積に縮小してしまい、国立公園としてわずかに命脈をつないでいるに過ぎない。

草原地帯の中を走る道路に、車に引かれた大アリクイが横たわっていた。膨大な数のアリを食う大アリクイは、色々なアリ塚を渡り歩いて、少しずつ食べるのが習性だ。そのために広い範囲を歩き回らねばならない。その最中に、人間の運転する車にひかれてしまったのだろう。

福山さんはいつまでも、死んだ大アリクイを見つめていた。


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このページは、が2011年2月 9日 20:05に書いたブログ記事です。

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