福島原発事故の評価をチェルノーブィリと同じレベル7に

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日本政府のやることには、どうも理解に苦しむところがある。今回、福島原発事故の深刻度評価をチェルノーブィリと同じレベル7に引き上げたこともそうだ。

レベル7といえば、原子力事故のうちではもっとも深刻な事態であり、「広範囲の健康および環境への影響を伴う」と考えられ、「計画的な広範な対策の実施」が必要と捉えられている。

日本政府はこれまで、この事故をアメリカ・スリーマイル島事故と同じレベル5と評価したうえで、事故の規模は巨大なものではないし、人間の健康への影響も限られていると説明してきた。それを一挙にレベル7に引き上げたわけだから、いったいどうなっているのだと思ったのは、筆者だけではあるまい。日本国民は無論、世界中が不可解に感じたのではないか。

今回の変更理由のうち、もっとも大きなポイントは、放射能の総放出量だ。ヨウ素131に換算して、原子力安全・保安院の概算では37万テラベクレル、原子力安全委員会の試算では63万テラベクレルになった。国際原子力事象評価尺度では、数万テラベクレルでレベル7とされているから、この値はそれだけで、この事故をレベル7に評価する根拠になる。どうもそういう理屈のようだ。

レベル7といえば、数字上ではチェルノーブィリと全く同じ規模であることを意味している。それ故、この数字を聞いた人が、事態がチェルノーブィリと同じように深刻で、日本国内のみならず、近隣諸国にも脅威を及ぼすのではないかと心配するのも、無理はないといえる。

チェルノーブィリ事故では、少なくとも50人が死亡し、被爆によるがんの発症で4000人が死んだとも言われる。日本でも同じような惨事が待ち受けているのか、そんな憶測まで呼ぶわけである。

ところがロシアやヨーロッパの専門家は、福島の事故の規模は、放射線の排出量をとってみてもチェルノーブィリよりはるかに小さく、少なくとも近隣諸国まで影響が及ぶことは全くないとまで断言している。

つまり尺度の大げささと、事態の真相とが、非常にかけ離れているわけだ。

日本政府はこれまで、事故を小さく見せるように意を用い、災害の規模は限定的だとか、健康への影響はないなどという一方、周辺の住民を強制的に非難させるようなことをしてきた。いうことと、なすこととが、全くチグハグだったわけである。

それが今回は、事故を実際よりも大きく見せるように、態度を変えたのか、どうもそんな勘繰りをしたくなる。ベクトルはかわっても、チグハグであることには変わりがないからだ。(写真はワシントンポストから)


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