苛烈な複合災害:東日本大震災

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東日本大震災は、桁外れに大きな規模からして、局部的な災害というよりは、国民的な大災害ということができる。中にはこれを1945年の戦災にたとえる論調もある。それは大げさすぎるとしても、阪神・淡路大震災の比でないことはたしかだ。

とにかく何から何まで、想像を超えた悲劇が襲ってきた。

マグニチュード9.0という地震は、日本人がこれまで経験したことのない巨大な揺れだ。そのため引き続いて襲ってきた津波は激烈なエネルギーを付与され、20メートルを超える波の壁となって、東日本の太平洋沿岸を飲み込んだ。

悲劇はこれにとどまらなかった。地震と津波による衝撃で、福島県北部沿岸に立地している東電の第一原発がシステムダウンして、多量の放射能漏れを伴う深刻な事態に陥った。それはまさにクライシスといえる事態であり、世界中に恐怖を発信している。

人的・物的・制度的な被害は計り知れない。震災発生後から三週間たった現時点でも、死者・不明者の数さえ把握できておらず、まして家屋などの物的損害は集計さえされていない。

福島原発の事故はまさに現在進行中であり、いつ安定化させることができるか、見当がついていない。今後数週間から数ヶ月、場合によっては数年かかるだろうとする見方もある。

首都圏はエネルギー不足に見舞われ、計画停電を実施せざるを得ない事態に追い込まれた。

被災された膨大な数の人々のことを思えば、一日も早く復興へ向けての動きが目に見える形で進むことが望まれる。

なにしろ三週間もたつというのに、今だに十数万人の人々が不自由な避難所暮らしをしており、また周囲から孤立して必要な物資に困っている人もいる。こうした事態は一刻も早く解消しなければならない。

これから本格的な復興にむけて、多くの困難が待ち受けているだろう。しかし日本人は先の戦災を始め、多くの大災害を乗り越えてきた。今回もきっと乗り越えることができるに違いない。

復興に向けて、マイナスに働くと思われる条件が二つある。ひとつは機能不全に陥っている日本の政治であり、もうひとつは、少子高齢化の進行に象徴される社会の動きである。

日本の政治のおそまつぶりはいうまでもない。めまぐるしく首相が交代し、政治に安定性や継続性が欠けていることは無論、国民統合へ向けてのリーダーシップが全くみられない。あるのは政治家たちの足の引っ張り合いばかりだ。

復興をきちんと進めるためには、政治が強いリーダーシップを発揮することが肝要だ。果たしてそれができるかどうか。

今回の震災は、日本が元気のない状態のなかで起きた。

1990年代以降の経済の長期低迷から、まだ本格的に回復できていない。その結果、国民はデフレ、所得の減少、雇用の不安定といったさまざまな負の要因に苦しんでいる。

政府の借金もGDPの二倍の規模にまで膨らんだ。それが復興に向けての財政出動に暗い影を落としている。

こういう情況にあるからこそ、政治が強いリーダーシップを発揮して、国民を復興に向けて統合していくことが肝要となる。でなければ、日本はこの震災をきっかけに、没落への道を歩み始めるかもしれない。


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このページは、が2011年4月 1日 20:11に書いたブログ記事です。

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