放射能汚染水を海に放出:福島原発事故

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ついに、ここまでやるかと感じたのは筆者ばかりではあるまい。東電が放射能汚染水を直接海に放出したという話だ。

東電はこれをやむにやまれぬ選択だったといっている。1-3号機の施設内にたまった高濃度の放射能汚染水を除去して一時保存するためのスペースを確保するには、低濃度の汚染水を海に放出せざるを得なくなったという理屈だ。

いくら低濃度で、さしあたっては人体への影響がないと説明されても、基準値の100倍もの濃度の放射能汚染水を直接海に放出する事態は、尋常ではない。放射能の垂れ流しと非難されても仕方がないところだ。

福島原発の事態は、思っていたより深刻なようだ。

政府や東電のこれまでの説明からは、危機はおおむねコントロールされており、遠からず収束に向かうと、おおかたの国民は感じていたことだろう。先日は政府自ら、放射能漏れは数ヵ月後には収束される見込みだと説明したばかりだ。それなのに、こうした事態が唐突に明らかにされる。いったいどうなっているのだと、多くの国民が不安になるのも無理はない。

現在の最大の課題が、冷却システムの回復にあることはいうまでもない。だが施設内に大量にたまった高濃度の放射能汚染水がその作業を妨げている。そこでその汚染水を取り除くために、仮の保管場所を用意しなければならぬが、そうしたスペースが十分に確保できない。そうこうしているうちにも、燃料の加熱を食い止めるために、大量の水を注入しつづけねばならず、その結果新たな汚染水が加わっていく。こうしたディレンマが進行している。

これは明らかに負の連鎖というべき事態だ。今回の措置はこの連鎖を強制的に断ち切ろうとする試みに見える。こうでもしない限り、事態の収拾に先が見えないということなのだろう。

事態発生から3週間以上もたったのに、解決に向けての明確なヴィジョンがいまだに描けていないのではないか。今回の措置をみると、そんな不安に駆られるところだ。


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このページは、が2011年4月 5日 19:49に書いたブログ記事です。

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