先日福島の原発事故がもとで、千葉県の船橋市に避難してきた子どもたちが、地元の子どもたちから、放射能を理由に相手にしてくれないといった、差別に類する行為をうける事態が発生した。親たちは、子どもたちを理不尽な目に合わせたくないといって、家族ともども福島県に帰っていったそうだ。
また、茨城県のつくば市に避難してきた福島県の人々が、つくば市の職員から、放射線被爆線量の調査結果を提出するよう求められるという事態が発生した。これには市長自ら深くかかわっていたとされる。
このほか、福島県から各地に避難した人々が、学校や地域社会でいわれのない差別やいじめにさらされている実態が数多く報告されている。
政府はこれを重く見て、法務省のホームページに「放射線被(ひ)曝(ばく)についての風評被害に関する緊急メッセージ」を掲載するなど、国民に対して、正しい知識にもとづいた適切な行動をとるよう呼びかけている。
だが役所のホームページで呼びかけるくらいでは、なかなか事態は改善しないだろう。もっと大掛かりな啓発活動が必要だ。テレビ、ラヂオ、新聞をはじめ公共媒体を最大限活用するのは無論、学校や企業の場で、正しい知識を提供するとともに、根拠のない差別がどんなに人を傷つけるか、大々的なキャンペーンを行うことも考えるべきだ。
かつて関東大震災がおきたときには、情報がゆがんで伝わった結果、朝鮮人に対する襲撃や虐殺など不幸な事件が起こった。(これも船橋が舞台になった)
それに比べれば、今回は比較的節度が保たれていると思うが、それでもこうした事件が起きるのは、人々に間違った情報が伝わっていることを物語っている。
情報が間違って伝わることの背景には、情報を受け止める人の気持ちに不安があることが作用している。心が曇っていると、事態を正しく受け止めることができないものだ。
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