<自民政権の北方領土交渉「指導力欠く」 米当局が酷評>と題して、朝日新聞がウィキリークスから入手した外交公電を分析する記事を載せた。
この公電は在日米大使館がプーチン首相の訪日を翌月に控えた2009年4月、日ロ関係全般についての分析を国務省に報告したもので、その中で「日本には、北方領土返還交渉のための計画も、計画を策定して最後までやり遂げる指導者も欠けている」と、当時の麻生政権を厳しく批判しているという。
これには他人の意見に耳を貸さない麻生総理のスタイルにも原因があるが、野党のほうも定見があるわけではない、日本は北方領土問題に関して、「政策の真空状態」に陥っていると、突き放した言い方をしているそうだ。
米大使館は総体的に、北方領土交渉に見られる日本のお人よし振りを冷めた目でみていたようだ。2009年4月の公電では、日本の外務官僚が、「メドベージェフ大統領にはやる気がある。交渉が進まないのは、部下が大統領に適切な情報を上げていないからだ」と信じていると指摘した上で、「おそらく、世間知らずな評価だ」との見方を示している。
さらに米大使館はロシアの真意について、「ロシア指導部は北方領土について、第二次大戦でヒトラーを支持した結果日本が払った代償で、対独戦でロシアが失った数百万の命の補償の一部だと考えている」とした上で、北方領土交渉でロシア側から譲歩を引き出すのはきわめて困難なことを、日本側が正当に理解していないことを揶揄している。
たしかに、米大使館からこんな風に思われるのも無理がない、といえる面が、日本側にないとはいえない。北方領土をめぐる交渉の経緯を見ればわかるように、日本側の主張には一貫性があったとはいえない。しかも歳月が進むにつれて、経済協力のほうが大きな関心事となり、領土問題の棚上げにつながるような姿勢を見せたこともある。
ロシアとしては、日本が北方領土の問題でバカげた要求をするのは、両国関係に何のプラスももたらさないのだから、日本はもっと利口になって、現実的な態度をとるべきだと思っている、これが現実なのだろう。なのに日本はその現実を正面から見据えようとしない、これが今回の公電に反映された米大使館の日本観だといってよいようだ。
ロシア側は最近、領土問題より経済協力を深めようではないか、そうすればおのずから両国の親善関係が深まるものだとの言い方をする。それは領土問題を棚上げしようとの強い意思を、別の言葉で表現したものだと受け止める冷静さが必要だ。
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