イスラエルの建国によって国を追われたパレルティナ人が「ナクバ(大災厄)の日」と呼んでいる5月15日、多くのパレスティナ人がイスラエルとの国境地帯に集結して大規模なデモを行ったが、そのデモ隊にイスラエル軍が発砲し、少なくとも12人が死亡、数百人が負傷する事態が発生した。
衝突が起きたのは、レバノン国境、シリア国境、ウェストバンクそしてガザ・ストリップの4ヵ所。シリア国境では、数千人規模のデモ隊が国境を超えてゴラン高原に流入しようとしたところを、イスラエル軍が発砲、2人が死亡、100人余りが負傷した。またレバノン国境でも、同じような事態が生じ、10人が死亡、100人余りが負傷した。
この事態について、シリア政府は、「犯罪」行為だと非難、イスラエルに全面的な責任があるとする声明を発表。レバノン政府も「ユダヤ人国家による侵略と挑発を阻止するため」、国連に苦情申し立てをした。
これに対してイスラエル政府は、彼らの闘争の目的は「イスラエルの存在そのものを問題視することにほかならない」と述べ、「破壊を企てる者から、断固として国境と主権を守る」と言明した。
ナクバの日にパレスティナ人がデモを行うことはこれまでも年中行事として行われていた。今年がこんなにも荒れた事態になったのは、中東に吹き荒れてきたジャスミン革命の余波であることは、ほぼ間違いない。
今年のデモ参加者は、チュニジアの若者と同じように、ソーシャルネットワークを利用して、デモを組織した。ヒズボラなどの既成組織も一定の役割を果たしたようだが、中核になったのは一般のパレスティナ人だ。
イスラエルとアメリカは、それぞれの立場からジャスミン革命の行方に神経を尖らせ、この勢いの矛先がいづれはイスラエルに向けられるのでないかと懸念していたようだが、今回のデモはその懸念が現実になった形だ。
これをきっかけに、イスラエルとアラブ世界との間に、新たな抗争の連鎖が起きる可能性も否定できない。(写真はロイター)
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