ロシアによる北方諸島不法占領にどう対応すべきか:菅さんはもっとまじめに取り組むべきだ

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フランスで行われたドーヴィル・サミットの場を利用して、菅総理大臣は各国首脳との個別会談をいくつか設定した。もっとも重要だったのはいうまでもなくアメリカのオバマ大統領との会談で、今回の東日本大震災に際してアメリカが寄せた協力に感謝するなど、両国の親密な関係を改めて確認した形だ。

これと並んでロシアのメドヴェージフ大統領とも個別会談を行ったが、これは領土問題という点に関しては、ほとんど中身のないものに終わった。北方領土をめぐる最近の事態が、両国の関係を緊張させていることを反映して、互いに自国の立場を主張しあうという、不毛のやり取りに終始したからだ。

これには、メドヴェージェフが来年に大統領選挙を控えていること、菅総理の国内政治基盤が揺らいでいることなどが影響しているなどと、一部の報道が「解説」していたが、日本としてはロシアによる実効支配(不法占拠)が強化される中で、ますます都合の悪い事態に追い込まれているのは間違いない。

ロシアにとっては、領土問題が表面化せず、時間だけが「進展」いくことは何も不都合でないばかりか、都合の良いことなのだ。

時間の「進展」とあえていったことには、それなりの背景がある。メドヴェージェフはロシア政府高官による北方領土訪問ばかりか、最近は韓国の実業家グループに北方領土を視察させるなど、世界に向かって実効支配の有効性をアピールし始めている。第三国がこうした形でからむことは、ロシアによる北方領土の領有を既成事実化させる大きなファクターとなり、日本にとっては不利な事態が深刻化することを意味している。

領土問題を棚上げするような雰囲気の一方、日露間の経済協力の問題は強く話し合われたようだ。これにはロシア側の石油・天然ガス開発への日本側の協力や、原子力安全に関する協力などが含まれている。いずれもロシアが日本に期待していたことだ。

どうも菅さんはメドヴェージェフの手玉に取られているようだ。領土問題では、先の「許しがたい暴挙」発言で、メドヴェージェフの怒りを正当化させ、領土問題を表面から取り上げにくくしている。他方では先の原発事故へのロシア側の協力を背景に、最悪と言われた両国間関係に一定の区切をつけ、ロシアの希望する経済協力を進展させようとの動きが再び出てきた。

これはロシアの従来の路線に、日本が改めて乗せられたということだ。つまり領土問題は棚上げにしたまま、経済分野で互恵の関係を深めようとするものだ。(写真はAP提供)


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