テレビ西部劇のヒーロー・ジェイムズ・アーネス(James Arness)が88歳で死んだ。死因は自然死だと発表された。
我々の世代では、ジェームズ・アーネスというよりは、ドッシ・シティ(Dodge City)の保安官マット・ディロン(Matt Dillon)といった方がわかりやすい。ディロンは、1955年から1975年までの20年間にわたって、ドッジ・シティを舞台に、アメリカの典型的な保安官として、アメリカは無論、世界中の人々を、魅了した男だ。
彼が出演した西部劇「ガン・スモーク(Gun Smoke)」は、最も長命な番組となった。日本でも放映され、ロー・ハイド、ララミー牧場と並んで大人気番組となった。
アメリカ発の西部劇にはいかがわしいものが多かった。特にアメリカ・インディアンを邪悪な野蛮人に仕立て、開拓民たちがインディアンに襲われたり、その復讐に男たちがインディアンを皆殺しにするといった馬鹿馬鹿しい筋建のものが横行していた。そうした中で、「ガン・スモーク」は一人の保安官を通して、正義とは何か、信頼できる人間とは何かについて語り続けた。
良心的な姿勢が観客の支持を受け、西部劇が衰退する中でも生き残り1975年に番組が終了した時には、最後の西部劇が消え去ったといわれたものだった。
筆者が初めて見た西部劇はヘンリー・フォンダが主演した「胸に輝く銀の星(The Deputy)」だった。フォンダ演じる保安官が、胸に輝く銀のバッジにかけて、正義を貫くというものだった。フォンダの演技を見た幼い筆者は、そのバッジにアメリカの司法制度の原点ともいうべきものを、子どもながらに感じたものだ。
ディロンもまた、アメリカ人の原点のひとつというべきものを、ただにアメリカ人のみなならず、世界中の人々に感じさせのではないか。(写真はAP)
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