東電株主総会の異様な光景

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6月28日に行われた東電株主総会の様子を、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)日本語電子版が痛烈に批判している。(「日本企業の惰性の惰性の縮図、東電株主総会」)

まず任期切れを迎える取締役17人のうち、16人が再任されたことに驚きの声を上げている。自ら退任を表明していた社長を除いて、すべての現職取締役が再任されたことは、東電の企業体質の無責任さが温存されることを意味している、これまでに生じた事故の責任や、その後の破滅的な対応振りが、何ら反省されていない、という論調だ。

たしかにWSJのいうとおりだ。これだけ巨大な事故を起こし、日本国民は無論、世界中に深刻な影響を与えたにもかかわらず、当事者の誰一人として、責任を問われないというのは、尋常な眺めとはいいがたい。

もっと異状なのは、これらの取締役がすべて、東電一筋に生きてきた人々だということだ。事故の原因をシビアに評価し、将来に向けて徹底した安全対策を実施し、社会の信頼を回復するためには、外部からの視点が是非必要な時にかかわらずだ。

東電の取締役には、一部の名目的な社外取締役がいるだけだ。彼らは東電の経営戦略にはほとんど発言権を持っていないといわれている。

こうした構図を許したのは、大量の東電株を保有する日本株式会社のほかのメンバーによる同情票だ。こうしたもたれあいが、これまでは日本企業のガバナンスを悪くしていた。今回はそれを抜本的に改める格好のタイミングであっただけに、旧来のやりかたがそっくり温存されたことは、この国の企業社会の行く手を暗澹たるものにしかねない。

なお、WSJの記事は触れていないが、この株主総会には脱原発の議案も図られた。同じような議案は、この日東電と並行して行われたほかの電力会社の株主総会にも提案されたが、それらは十分な審議がなされないまま否決されたと、一般紙が報道している。





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このページは、が2011年6月29日 20:07に書いたブログ記事です。

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