春 The Spring:エズラ・パウンド

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エズラ・パウンドの詩集「ペルソナ」から「春」The Spring(壺齋散人訳)

  シドニアの春が従者たちを伴い
  ―それはリンゴの精や水の精―
  トラキアから吹いてきた風を避け
  この森を横切ると
  つぼみがいっせいに花開き
  どの葡萄の木も
  明るい光に包まれる
  すると荒々しい欲望が
  黒い稲妻のように落ちてきて
  心を困惑させてしまうのだ

  どの枝にも昨年失ったものが戻ってきた
  なのに春は シクラメンの花に囲まれながら
  亡霊のようなかすかな動きをするだけなのだ


シドニアは別名をアテナという、戦いの女神だ。その女神が歩くところ、春の気配が充満する、すると詩人は荒々しい欲望にとらわれて、心が困惑するのを覚えるのだ


The Spring Ezra Pound

  Cydonian Spring with her attendant train,
  Maelids and water-girls,
  Stepping beneath a boisterous wind from Thrace,
  Throughout this sylvan place
  Spreads the bright tips,
  And every vine-stock is
  Clad in new brilliancies.
  And wild desire
  Falls like black lightning.
  bewildered heart,
  Though every branch have back what last year lost,
  She, who moved here amid the cyclamen,
  Moves only now a clinging tenuous ghost.


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