マリナーズのイチロー選手が大リーグ11年目のシーズン日程をすべて終了した。成績は184安打、打率 .272 で、11年連続200本安打以上の記録達成はならず、打率も初めて3割を下回った。
この結果をどう見るか、スポーツ評論家たちは百家争鳴のような意見展開ぶりだ。イチローもすでに37歳になって、やっと体力の衰えが現れたというものから、体力はまだ人並み以上にあるものの、別の要因が働いて、今年は不本意な結果に終わったという論まで様々だ。
体力の点でいえば、イチローは37歳という年齢をまだ感じさせない。そのことは体力の衰えが最も早く反映すべき盗塁数に現れている。イチローは今シーズン40盗塁を記録しているのだ。40盗塁と云えば、普通の選手が37歳で達成できる数字ではない。イチローの身体能力がまだ非常に高いことの証拠ともいえる。
イチローはもしかしたら近視がひどくなって、球筋が良く見えなくなったのではないか、と推測するのは冷泉彰彦氏である。氏は今年のイチローの守備は決して下手になったわけではないが、不自然なプレーが多くなったという。それは彼の目が近視になったと考えれば説明できる。だとすれば来シーズンはきちんとした視力検査に立って、コンタクトレンズをはめるなどの対策を取れば、まだまだ現役として十分な活躍が望めると考えるわけだ。
大リーグ全体のある流れがイチローを直撃したという見方もある。大リーグには周期的に投手優位の時期がやってくるが、それはほとんどの場合、新しい変化球の普及と関係している。1970年代にはスライダー,1980年代半ばにはFFBの普及によって投高打低の傾向が強まったが、今シーズンの場合はカットボールの普及が投手優位の傾向をもたらしている。
つい近年までは大ホームラン時代と云われるように、打者優位の時代が続いていた。それが今年は一転して、投手優位に変わった。それをもたらしたのがカットボールというわけだ。
カットボールは右打者が左打者に対して投げる場合に威力を発揮する玉だ。右打者の投げたファーストボールが左打者の手元でボール一個分くらい内側に変化する、それに左打者がうまく反応できずに、ボールの芯で打ったつもりがこころもち内側でバットをあてるということになる。いきおい、あたりがつまったり、バットが折れたりと云う結果につながる。
今シーズンのイチローは、この右投手が投げるカットボールにタイミングを外されていたケースが多かったようなのだ。
ともあれ、冷泉氏がいうように、イチロー選手がこのまま晩年に突入するとは考えにくい。視力を矯正し、カットボール対策に十全を期すことにより、来年はきっと復活すると考えたい。もう、連続200安打記録にこだわる必要はないのだから、ヒット数にこだわらず、自分に納得のいくプレーをしてもらいたい。イチロー選手自身が納得できるプレーなら、我々ファンは心から応援する気になろうというものだ。
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