津波火災:海が燃える

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3.11に東北沿岸を襲った巨大津波は、街々を嘗め尽くした後に、甚大な規模の火災を引き起こしていた。人々は、激震と津波を相次いで経験し、やっと生き延びたかと思った矢先に、広がる火災の炎に包まれ、それで命を落とした人も多かった。あまり知られることのなかった、この津波火災というべき現象について、NHKスペシャルが光を当てていた。(巨大津波 知られざる脅威)

NHKの調べによると、津波の去った後に火災が生じた場所は130地点の多さに上る。何らかの原因で瓦礫に引火し、それがあっという間に広がる。海上で生じた火災も多く、海が燃えたところもある。気仙沼の場合、狭い入江状になった湾の全体が、火に包まれた。

番組は気仙沼で津波火災に遭遇し、万死に一生を得た人たちの恐怖の体験を紹介していた。岡崎さん夫妻は自宅の中にいて津波に遭遇し、必死になって生き残ったところを、火の海に囲まれた。一時はあきらめかけて、奥さんがお姉さんに携帯メールを送り、もうだめかもしれないと弱音を吐いたところ、「ガンバレ 絶対 生きて」という返事が返ってきた。二人はこの言葉に励まされて、必死になって脱出した。

村上さんは自分の船に乗って漂流していたところ、周囲の海が文字通り火の海と化し、自分の船にも炎が移ってきた。それでも何とか生き延びることができたのは、奇跡としかいえない。

火災の恐怖は津波や激震の恐怖よりもインパクトがある。瞬間的にこのすべてを体験した人々の心には、外からは窺い知れない恐怖の痕跡が残ったに違いない。

水上で何故火災が起きるのか。そのメカニズムを、番組は紹介していた。

まず、火種であるが、これは家庭用のプロパン、製油所のタンクから流出した重油、車の電気系統などが主なものだ。家庭から流されたプロパン・ボンベが破損してガスが吹き出る、その状態でボンベが金属製の障害物と衝突し、その衝撃で発生した火がガスに点火する。車の場合も、衝突の衝撃で電気系統がショートし火花が散る、これが引火して火災を引き起こすというメカニズムだ。

重油の場合にはいささか解説がいる。海水の上に漂う重油はそれだけではなかなか引火しない。またたっぷり水を含んだ木材も簡単には引火しない。ところが重油が木材にまとわりつくと簡単に引火してあっという間に燃え広がる。これは、木材があたかも蝋燭の芯のような役割を果たすことから生じる現象だと考えられる。

どの事態も、これまであまり着目されてこなかったことだ。我々は、巨大な津波がきたら、そのあとには大規模な火災が発生するのだと、頭に叩き込んでおく必要がある、番組はそういっていた。(映像は火の海と化した気仙沼湾:NHK)





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このページは、が2011年9月12日 20:13に書いたブログ記事です。

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