政府が震災復興財源の一つとして東京メトロ株の売却を検討していることを受けて、東京都の石原知事が購入に強い意欲を示した。地下鉄の経営一元化を意識してのことだ。
都はこれまでも地下鉄一元化の努力をしてきた経緯がある。鈴木知事の時代には、都が営団を買収することを通じて一元化しようとし、失敗。最近は猪瀬副知事が先頭になって、営団との経営一元化交渉を進めてきたが、これもさまざまな理由から頓挫した。
営団が完全に民営化されると、経営一元化の可能性は殆どなくなるといわれていたので、今回の石原知事の発言は最後の可能性が残されていたことを、気づかせた形だ。
いままで、一元化交渉がうまくまとまらなかった理由は良くわからない。巨額の赤字を抱えているとされる都営地下鉄側の事情が主な理由だといわれてきたが、詳細は示されていない。
忖度するに、メトロ側にも都側にも、現場には一緒になりたくないという気持が強くあって、それが交渉にブレーキをかけたのではないか。
都は国と並んでメトロの大株主だ。今のところ国が53.4パーセント、都が46.6パーセントの割合で保有している。石原知事は都の保有割合を少なくとも半分以上にし、メトロとの経営一元化に向けて発言力を高めたい意向だ。完全にメトロにいうことを聞かせるには、3分の2以上が必要になる場合もあるが、石原さんはそれも視野に入れているようだ。
地下鉄の経営主体が二つに分かれているのは、国内はもとより、世界中の大都市にも例がない。利用者にとっては、料金体系や乗り換えの便宜のうえで、やはり不便であることは間違いない。過去の行きがかりを捨てて、早急に一元化されるよう、石原知事に激励のメッセージを送りたい。
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