革新的な発明家であり、かつ創造的な経営者であったスティーヴ・ジョブス(Steve Jobs)氏が、56歳にしてすい臓がんで死んだ。世界中のメディアは彼の死を惜しむ記事で溢れている。一企業家の死がこんなにも大きな関心を集めたことはかつてなかったことだ。
ジョブス氏はコンピューターを人々にとって身近な存在にしたばかりか、それを使うことで様々な夢を実現させ、同時代人たる我々の生活を飛躍的に変えた人物だ。彼があらわれていなかったら、コンピューターはまだ身近な情報ツールには育っていなかっただろう。
ジョブス氏のコンピューター人生は、1976年に友人のスティーブ・ウォズニアック(Steve Wozniak)氏とともにアップル・コンピューター社を設立することから始まった。この会社から発売したアップルⅡは、歴史上画期的なパーソナル・コンピューターとなり、人々にとって、コンピュータというものを初めて身近な存在にした。
1084年に発売したマッキントッシュは、ビルトインモニターやディスクドライブ、マウス操作といった今日のパソコンの基本となる技術を搭載し、パソコンと云えばマックといわれるようになった。
だが1985年に権力闘争の末にアップルを追放され、彼を失ったアップルはパソコン産業の本流から次第に後退するようになる。
1997年にアップルに復帰したジョブスは、iMac, iPod, iPad, iPhone といった商品を次々と開発、あっという間にアップルを再び世界最大のIT企業に育て上げた。
これらの製品を通じてジョブスが追及したのは、単なるものづくりでもなく、また単なるノウハウでもなく、その二つを統合した総合的なコンピューター作りをめざすことだった。
ジョブスは人々に身近で使いやすいパソコンのハード面での基礎づくりをすると同時に、パソコンを動かすためのOSをはじめ、ソフトの開発にも目覚ましい成果を上げたのだ。
2004年にすい臓がんの手術を受けて以来、ジョブス氏の人生は壮絶な癌との戦いに明け暮れた。近年の彼の写真を見ると、病気でやつれきった表情が痛々しい。それでも、第一線に立ち続け、タッチスクリーン式スマートホン IPhone を世に送り出すなど、常に創造性を失わなかった。
そんな彼が我々に残した言葉がある。"Stay hungry, Stay foolish" というのがそれだ。創造はハングリーな精神から生まれる、豊満からは何も生まれない。また人々からバカだといわれることを恐れてはならない。果敢な精神とは多くの場合、凡庸な人々には愚劣だと映るものなのだ。
いかにも、型破りの人間らしい言葉だ。
彼の豊かな想像力と壮絶な戦いぶりに、一人の同時代人として敬意を表したい。(写真はAFPから)
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