EUが示したギリシャ救済プランについて、その是非を国民投票に付すとパパンドレウ首相が表明したことで、ユーロ危機が再び燃え上がる気配だ。主要国の株式市場は軒並み混乱し、ギリシャ国債だけではなくイタリアやスペインの国債も価格下落した。
メルケルとサルコジは早速パパンドレウに電話をかけて、いったいどういうつもりなんだと非難するし、欧米の専門家たちは、パパンドレウが果して自分の置かれた状況を正しく理解しているのかどうか、極めて懐疑的になっている。
パパンドレウは、まず議会の信任投票を行い、それを踏まえて国民投票を実施するといっている。議会の方は、なんとか信任される見込みがついたということなので、12月中には国民投票が実施される見通しだ。
だがその結果はミエミエだ。大幅な緊縮策で生活を脅かされると思っている国民が、EUの案を飲むわけはない。なにしろこれまでも、連日のようにこの問題を巡ってストが繰り広げられているくらいだから、国民はパパンドレウの申し出をあっさりと否決してしまう可能性が高い。
そうなったらどうなるか。ギリシャ政府への信頼は地に堕ちるだろうから、ソブリン危機が深刻な様相を呈することは間違いない。
だがパパンドレウはそんなことは分かったうえで、今回の決断に踏み込んだフシがある。仮にギリシャ国民が痛みを拒否した場合に、ドイツやフランスはギリシャを簡単に見捨てられるだろうか。
ギリシャが破たんすることは、ギリシャだけの問題ではない。ユーロ危機はポルトガル、スペイン、イタリアにも浸潤しており、ギリシャの破たんはそれらの国の破たんにまでつながる恐れがある。そうなれば、ドイツやフランスも無傷と云うわけにはいかない。
だいたい今回の危機収拾スキームは、ドイツやフランスなどの都合の良いように作られている。つまりギリシャに一方的な負担を押し付けることによって、自分たちの負担を最小限にとどめようとする魂胆がミエミエだ。こうパパンドレウは思っているに違いないのだ。
ドイツやフランスが今のような繁栄を謳歌しているのは、EUという器の中で生きることができるからだ。ドイツはユーロという通貨の影に身を隠すことで、貿易その他で巨大な便宜を享受している。その便宜は、ユーロが揺らげば続かないものだ。
そのユーロを防衛するために、ドイツやフランスは応分の負担をしていない。そんな苛立ちが、パパンドレウを今回の決断に走らせた原因ではないか。(写真中央はパパンドレウ:ロイター)
コメントする