ヒラリー・クリントン米国務長官が、アメリカの国務長官としては57年ぶりに、ビルマを公式訪問した。クリントン長官は早速テイン・セイン大統領と首脳会談を行ったが、今のところ経済制裁の緩和を含めて、具体的な約束を交わすなどまでには至っていない。ビルマが国際社会への復帰に向けて、どれほど真剣であるか、値踏みをしているようだ。
一方クリントン長官は、ビルマのシンボルたるシュエダゴン(シッタゴン)寺院を訪問、素足で参拝したほか、アウン・サン・スー・チー女史とも会談した。
スー・チー女史は、テイン・セインの姿勢を心から信用しているわけではなさそうだが、近く行われる総選挙に、彼女が率いる政党から多くの立候補者を出す計画を明らかにしている。
テイン・セインが、国際社会への門戸解放の動きに踏み切ったことの背景には、周辺のアジア諸国が急速な経済発展を遂げている中で、ビルマだけが取り残されていくという焦りがあるためだと思われている。
世界中から孤立したビルマにとって、唯一の頼りは中国だ。その中国は、ビルマを自然資源の確保先として利用しているだけで、ビルマ全体の均衡ある発展という目標にとっては、むしろ足かせになりつつある。
他に交流のある国と云えば、北朝鮮やベラルーシなど旧ソ連圏の諸国だけだ。(クリントン訪問の日の政府系新聞「ミャンマーの曙」は、ベラルーシの首相夫妻のビルマ訪問を一面トップで報じ、クリントンのことは二面で小さく触れたにすぎなかった)
これでは、他のアジア諸国からますます取り残されてしまう。こうした焦りがテイン・セイン政権を、開放的な方向に向かわせているのだろう。
今のところアメリカはビルマに対して、人権の尊重と40パーセントといわれる少数民族の権利保護、民主的な政治体制などを求めていくものと思われる。(北朝鮮との関係見直しも含まれる)
日本政府も、こうした動きを踏まえて、大使の派遣など、国交正常化にむけての準備について検討を始めた。(写真はAFPから)
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