北朝鮮の泣く人たち

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金正日の死亡が伝えられてからというもの、北朝鮮全土では、派手なパフォーマンスで泣き叫ぶ人々の姿が目立った。その様子は海外のメディアにも伝えられたから、世界中の何億と云う数の人々が見たに違いない。彼らは、北朝鮮の人々が何故こんなにも激しく泣いているのか、その理由を理解するのに難儀を感じたことだろう。

表向きには、彼らは北朝鮮人民のかけがいのない指導者であった金正日大将軍を失ったことにショックを受け、どうしていいかわからなくなって泣き叫んでいるのだ。

それにしても、そのパフォーマンスが尋常ではない。目を真っ赤に泣き腫らし、胸を両手で叩き、髪をかきむしり、地団太を踏んで激しく泣き叫ぶのだ。いったいどんな事情があって、人間をこんなにも激しく泣き叫ぶようにさせるのだろう。彼らのパフォーマンスを見た人はみな、不思議な感情にとらわれたに違いない。

勿論、色々な解釈がある。北朝鮮では、偉大な指導者の死は、最大級の礼節をもって悲しまれなければならない。その礼節とは、心からの悲しみを表に現すことなのだ。その礼節を示さない人間は非常に無礼な人間だと、まわりから指弾されるのだ。

だからこれら泣いている人々の殆どは、自分の身の安全のためにそうしているのだ、とこの説の主唱者はいう。その証拠に、人の目を気にする必要のない場所では、人々は殆ど泣いていないという報告もある、と付け加える。

いや、北朝鮮の人々の多くは、金正日同志に親愛の感情を抱いていたのであり、その親愛の感情の裏返しとして、その死を激しく嘆くという行動に出ただけなのだ、という解釈もある。そう解釈する人は、北朝鮮の独裁体制が人民を洗脳することに一定程度成功しているという仮説に立っている。

金日成も金正日も、北朝鮮の人々には神の如き存在として教え込まれてきた。金正日が死んだときには様々な不思議な現象が起こった。それらはみな金正日大将の死がもたらした奇跡なのだ。金正日大将はそれらの奇跡を通じて、北朝鮮人民に優しく呼びかけているのだ。金王朝三代目の金正恩を新たな指導者として受け入れよと。

金正日大将は奇跡を引き起こす神の如き存在なのだから、北朝鮮人民は心から大将の遺言に従わねばならない。少なくとも表立って従おうとしないものは、必ずや罰せられることであろう。(写真はITAR-TASSから)





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このページは、が2011年12月28日 19:05に書いたブログ記事です。

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