The Person of the Year 2011 はプロテスター

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米誌TIME恒例のThe Person of the Year 2011に指名されたのはプロテスター(Protester 抗議する人)だった。特定の個人でもなく、かといって集合概念としての抗議者でもなく、抗議する個人である。

今年は民衆による抗議の波が世界中を洗った一年だった。2月にチュニジアで焼身自殺をして体制に抗議した男性の行為が、瞬く間に人々の心をとらえて、体制を崩壊へと追いやった。ジャスミン革命あるいはアラブの春と云われる運動は隣国のリビアやエジプトにも広がり、強大と思われた独裁政権を倒した。

いまでも、シリア、イエメン、バーレーンの独裁政権が民衆のデモによって揺さぶられている。

ジャスミン革命は、アラブだけにはとどまらなかった。今のところ成果には結びついていないが、中国でも反体制デモの動きは共産党政権を震え上がらさせるには十分なインパクトをもった。ロシアの腐敗したマフィア政権も民衆からの強い拒絶に直面し、さすがのプーチンも一定の配慮をせざるをえなかった。

民衆の反体制運動は、独裁的な政治体制の国ばかりでなく、民主的な政治をモットーとする先進国にも広がった。アメリカでは人々が「ウォール・ストリートを占拠せよ」と叫びながら、格差の是正などを求めてたちあがった。イギリス、フランス、イタリアなどでは昨年来学生たちによる異議申し立ての動きが続いている。また未曽有の財政危機に見舞われたギリシャでは、民衆が無能な政治家を糾弾して連日のように街頭にくりだした。

こう見てくると、民衆による抗議運動の波は、世界中を洗っているのがわかる。日本のように平穏なのは実に例外的な現象ともいえる。

何故これほどまでに、抗議の動きが歴史を動かすほどに盛り上がったのか。

それはやはり、一人一人の個人にも、社会のあり方を動かすだけの力があるのだということを、世界中の人々が強く確信するようになったことのあらわれではないか。つまり、個人は一方的な統治の客体ではなく、政治を動かしていく主体であるという自覚が高まってきたのではないか。

健全な民主主主義はこうした自覚ある個人を前提にして成り立つ。その意味で、21世紀という新しい時代環境は、民主主義が世界規模で実現されていくことを、世界史上初めて可能にするのだと予感させる。





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このページは、が2011年12月17日 20:04に書いたブログ記事です。

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