北朝鮮の共同社説:食糧不足についての本音

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北朝鮮恒例の政府系新聞共同社説が発表された。筆者はハングルを解しないので、直接読むことはできなかったが、内外のメディアの論評をもとに、その概要を探ってみた。

北朝鮮にとって今年の最大の課題は、金正日の死亡に伴う金正恩への権力のスムーズな移行がなされることと、かねてから予告されていた強制大国元年に相応しい経済力を確立することだろう。

金正恩への権力の移行については、金正恩は金正日そのものなのだと強調することで、金正恩の権力の正統性を強調し、軍、官僚、人民に対して金正恩を中心に一致団結することを求めている。特に一般人民に対して、人間の盾となって金正恩を守るように求めているところが、いかにも独裁国家らしい言い方だ。また、軍に対しては引き続き先軍政治を行うとして、軍部を中心とした北朝鮮の特権的利権共同体の維持を約束している。

経済問題については、北朝鮮の実態が強制国家などと云える代物ではなく、深刻な食糧不足やエネルギー不足、日常生活に必要な物資の欠乏に悩んでいることを白状して、次のように述べている。

「我が党の強盛復興戦略を貫徹するための総突撃線を行わねばならない。強制国家建設の主攻戦線である軽工業部門と農業部門で大革新の炎を激しく燃えあがらせなければならない」(アジアプレスから引用)

口先でいくら炎を燃え上がらせようといっても、腹が減っていては屁も出ないだろう。最近は軍隊の兵士たちまで栄養失調に陥っているというから、食糧不足は相当深刻なレベルに及んでいると思われる。

外交についての言及は低調だったようだ。6か国協議メンバーのうち、中国とロシアについては関係の強化に言及したが、アメリカについては朝鮮半島からの米軍の撤退を5年ぶりに求めた。

韓国に対しては、「民族の大国葬を無視し、弔意の表示を各方面に妨害している南朝鮮逆賊輩党の反人倫的、反民族的行為は、怒りと糾弾を招いた。南朝鮮の執権勢力は、人民の峻厳な審判対象となっている」(同)と述べ、李明博政権は永久に相手にしないとした年末の声明を改めて繰り返す形になった。

日本については何らの言及もない。ただ社説外の動きとして、日本政府が在日朝鮮人の弔問を妨害したことに対して、烈しい敵意を示しているところだ。

北朝鮮の国際的な孤立の原因となっている核開発計画については一切触れるところがなかった。

この社説の内容を裏付けるように、金正恩の新年最初の公式行事は、軍部を慰問することだった。(写真は食糧不足で痩せた兵士:アジアプレスから)





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このページは、が2012年1月 3日 19:07に書いたブログ記事です。

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