あんこうといえば、鍋物とあんきも、ちょうど今頃の冬の味覚だ。我々が食しているそのあんこうが、どれもみなメスであることは普段あまり気にはしていない。ところがものの本に当たると、あんこうのオスというのは、我々人間様の目に触れることはまずないのだそうだ。というのも、あんこうのオスはメスに寄生し、心も形もメスと一体化してしまうというのだ。
あんこうのオスはメスよりもはるかに小さい。メスと出会ったオスは、するどい歯でメスに食らいついて離れない。しばらくすると、メスの肌や血管と融合し、精巣以外はすべてがメスの組織と融合してしまう。メスはこうしたオスを、それぞれ6匹前後自分の体内に飼育しているという。とはいってもその内実は、生殖に直接関係のある部分だというから恐ろしい話だ。アンコウのメスにとってオスとは、単なる子種に過ぎないというわけなのだ。
そのメスのあんこうは、多くの場合深海の底近くに潜んでいる。頭から細長い触角を伸ばし、暗黙の中でその先端を光らせることで、餌となる生き物をおびき寄せる。
あんこうには200種類くらいが確認されている。我々に馴染みが深いのは食用になるあんこうと、提灯あんこうだ。上の写真はニシアンコウ(Lophius piscatorius)という種で、体長2メートル、体重60キロにもなる、あんこうのうちで最大のものだ。
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