帰宜興留題竹西寺三首(其一):蘇軾を読む

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元豊八年、蘇軾は徐州へ赴任する前に常州の宜興に土地を求めた。できうればここに定着して余生を静かに送りたい、そう考えた蘇軾は常州居住の許可を朝廷に願い出た。朝廷ではその頃神宗皇帝が死去する騒ぎがあったが、蘇軾の願いは聞き届けられた。

喜んだ蘇軾は、徐州への旅を切り上げて宜興へ向かうことにした。当時広陵(揚州)にいた蘇軾は「帰宜興留題竹西寺三首」を詠んで、常州居住の喜びをあらわした。

蘇軾の五言絶句「宜興に帰らんとして竹西寺に留題す三首(其一)」(壺齋散人注)

  十年歸夢寄西風  十年歸夢西風に寄す
  此去真為田舍翁  此より去って真に田舍翁と為る
  剩覓蜀岡新井水  剩(さら)に蜀岡新井の水を覓めん
  要攜郷味過江東  郷味を攜へて江を過ぎりて東せんと要(ほっ)す

この10年故郷に帰りたいという夢を西風に託してきた、やっとここを去って本当の田舎親父になれる、このうえは蜀岡の新井の水を汲んで、田舎の味を土産にして長江を東へと下って行こう


竹西寺は揚州郊外にある禅宗の寺院。蜀岡は揚州郊外にある丘陵。常州は揚州の東に位置するから、蘇軾は長江を東へ下るといっている。


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