政策インフレは形を変えた増税だ:インフレ待望論の危険性

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FRBのバーナンキ総裁が、現在実施中のゼロ金利政策を少なくとも2014年いっぱいは継続すると表明した。デフレ傾向の中で長引く不況を意識したものだ。バーナンキ総裁は併せてインフレ目標を2パーセントに設定し、その実現のために必要なら、貨幣の供給量を増やす方策としてのQE3を実施する可能性にも言及した。

この発表を受けて日銀にも同じような政策を求める圧力が高まるだろう。金融アナリストを自認する連中は早速、日本でもインフレ目標を明確にし、デフレからの脱却を目指すべきだと、声高に主張し始めた。

だが彼らはインフレが形をかえた増税だということを十分に認識しているはずだ。インフレで金の価値が下がる分だけ政府の借金は減る。インフレは消費税を引き上げるよりも、手っ取り早い財政再建効果をもつ。

こんなことがわかっていながら政策インフレを主張するのはあまりにも露骨だというので、彼等はデフレの脱却が景気回復につながるなどと、根拠のない説を持ち出して自分の言い分を正当化しようとする。デフレは有効需要の不足が原因であって、したがって不況のもたらした結果である。不況の原因だとする言い方は本末転倒というべきだ。

金融アナリストたちはここ数年、日本経済の金融化を熱心に勧めてきた。彼らは実体経済の成長より、金融市場の拡大の方が大事なのだ。金融市場はどちらかと云うと、インフレ下の方が活発化する。インフレで借金の棒引きができるようになれば、銀行はじめ金融機関の財務体質が強化されるし、また貯金が目減りするので、庶民は今より以上に株や債券を買うようになるだろう。つまりインフレは金融関係者にとって打出の小槌というわけなのだろう。

インフレで一番損をみるのは我々一般庶民だ。日常の物価は上昇する、なけなしの貯金は目べりするで、生活は苦しくなる一方だ。一方で景気がよくなる保証はない。政策インフレの結果、インフレと高失業率との共存という最悪の事態に追い込まれたイギリスの例をみればよい。

並みの判断力がある人間なら、政策インフレが庶民にとっていかに破壊的であり、したがって反社会的なものだということは、簡単にわかるはずだ。わかっていながらそれを主張するものは、他人の財布を犠牲にして自分だけ儲けようとする魂胆を持っているに違いない。彼らは、金融化がもたらすものがゼロサム・ゲームだということを十分に知ったうえで、そんなことを主張するわけだから。(写真はバーナンキ:ロイターから)





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このページは、が2012年1月27日 19:04に書いたブログ記事です。

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