NHKスペシャル「ヒューマン 何故人間になれたのか」第3集は「大地に種をまいたとき」と題して、人類にとっての農耕の始まりを取り上げていた。我々の祖先は今から1万2千年前に初めて小麦の種を植えることを覚え、それをきっかけにして、狩猟採集の生活から農耕の生活へと飛躍した、という内容だ。
小麦の原産地はトルコあたりだという。だから初期の小麦の遺跡も、トルコ南部、イスラエル、シリア、イラクにかけての地帯(肥沃な三日月地帯)で発見されている。しかし人類による栽培が始まった頃の小麦は、現在の栽培種とは大きく異なって、収穫量が少なかった。タンポポのように,せっかくなった実が風に飛びやすい性質を持っていたからだ。それ故小麦は主食というよりは、御馳走として扱われた。それで隣人をもてなし、平和な関係を築こうとしたわけだ。
小麦が現在の栽培種のように、収穫の多い性質を持つようになったのは、9千500年前頃のことだ。それによって小麦は主食の座を確立し、人類は大幅に人口を増やすことができた。少ない収穫でも、人類が長い期間にわたって大事に小麦を育ててきたために、突然変異のチャンスが増えて、種の大変化につながったからだ。
農耕を始めたことで、人類にとって土地を巡る争いが本格化した。狩猟採集の時代には、互いに無関係に生きていられた集団同士が、土地に定住することによって、永続的な関わり合いの中で生きていくようになったために、土地の帰属をめぐって争い合ったり、反対に協力し合うようにもなったわけだ。
人類が農耕を始めたときは、長い間の氷期が終わって地球が温暖化する時代だった。氷期には海面はいまより130メートルも低かったが、温暖化で氷が解けることで海面が上がった。人類の祖先たちは、度重なる大洪水の脅威の中で、農耕を広げていったのだと思われる。(その時の記憶の痕跡が聖書のなかに残っているのだろう)
ところで人類の都市文明が花開くのは今から5千年前の四大文明の発祥からと、筆者などは子供の時代に教えられた記憶があるが、その時代にいきなり始まったのではなく。長い助走期間があったということを、この番組はあらためて教えてくれる。
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