原始力事故に対応する防災指針について、国の原子力安全委員会が2006年のIAEAによる改訂作業にあわせて改定しようとしたところ、原子力安全・保安院が強力に抵抗し、改定が見送られていたと、朝日新聞の夕刊(3月15日)が報じている。本当のことだとしたら、日本の原子力ムラの、指摘されているような犯罪的な体質が、改めて暴露されたということになる。
この時の改訂の柱は、原発から半径8~10キロ圏内の防災対策重点地域(EPZ)を廃止し、新たに半径30キロ圏内の緊急時防護措置準備区域(UPZ)に拡大しようとするものだった。
これに対して保安院は、「社会的な混乱を惹起し、ひいては原子力安全に対する国民不安を増大する恐れがあるため、検討を凍結していただきたいと」と申し入れた。原子力安全神話を当然のこととして、国民の安全に対する配慮よりも、原発推進を優先させた考え方からだ。
結局、原子力委員会の方が折れ、「現行の防災指針で柔軟に対応可能」という理由で、新しい区域の導入は見送られた。
もしもこの時、IAEAの基準にそった改定が行われていたら、30キロ圏内の住民は3月12日未明の時点で非難・屋内退避ができ、甲状腺被曝を防ぐ安定ヨウ素剤も服用できていた可能性がある、と朝日は伝えている。
今回の事故を受けて、原子力安全委員会は昨年7月に防災指針の見直しに着手したが、遅きに失したといわれても仕方あるまい。
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