東電の株主42人が、東電の新旧経営陣27人を相手取って株主代表訴訟を起こした。昨年11月に、事故に責任のある役員を訴えるよう、東電の監査役に求めたところ、東電側は今年1月に提訴しない方針を決めたので、代表訴訟を起こすこととしたそうだ。
訴えられたのは、事故当時の役員18人のほか、文部科学省が三陸沖でマグニチュード8クラスの地震が起きるとの長期評価を公表した02年7月以降の社長、会長、原発担当の役員。損害賠償請求額は5.5兆円だ。
原告代理人の河合弘之弁護士は「集団無責任を是正し、他の原発の再稼働も防ぎたい」といっているそうだ。
原告らは、02年7月の長期評価のほか、08年春に明治三陸地震(1896年)級のM8・3の地震が福島県沖で起きた場合、最高15・7メートルの津波が同原発に来るとの社内試算があったこと、09年に原子力安全・保安院から貞観地震(869年)を踏まえた津波対策の検討を促されていたこと、などを指摘したうえで、東電がこれらの警告に対する具体的な対策を怠り、莫大な損害を生じさせた責任は重いとしている。
株主代表訴訟は、企業の不正に対する責任追及制度として取り入れられたもので、最近は訴訟費用の低額化や手続きの簡素化によって、広く利用されるようになった。蛇の目ミシン工業の利益供与事件を巡る訴訟で、東京高裁が08年4月に583億円の賠償を命じるなど、高額賠償を認める判決が相次いでいる。
東電は事故後、自らの責任を認めることには消極的だった。東電が自主的に出した事故調査報告には、事故は天災によって生じた予測不能のもので、東電としては最大限の対応を尽くしたと開き直るような言い方をしているし、先日公表された民間事故調による調査に当たっては、協力を全面的に拒否した。
また事故対応についても、一時国有化をしたうえで抜本的な対策を考えたいとする政府の方針に抵抗して、自己保存に汲々としている。自分たちの犯した罪を反省せず、その罪によって生じた巨額の損害を、電力料金の値上げによって、つまり顧客の財布を通じて、賄おうとまでしている。地域独占企業としての自らの特権的な地位を利用して、利用者や震災の犠牲者の、そのまた犠牲の上に立って、自分たちの身分の保全を図ろうとするものだ、と指弾されても仕方がない。
こうした姿勢は、起こした事故の深刻さからして、とても国民の理解は得られないだろう。その国民に代って東電の責任を追及し、応分の償いをさせたいとする株主たちの姿勢は、大いに共感されるに違いない。(写真は共同通信から)
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