イスラエルのネタニアフ首相は、アメリカ訪問から帰ると早々、国内向けに訪問の成果を誇示した。成果は二つあった、と彼は言った。一つはイランによる核開発を、国際社会を脅かす最大の脅威と、アメリカに認識させたこと、もうひとつは、イランによる核攻撃から自国を防衛するために、イラクに対して先制攻撃をする権利をアメリカに認めさせたこと、このふたつだ。
その上でネタニアフは、イランが核開発を放棄しない限り、イスラエルはイランの核開発施設を攻撃するだろうと予告した。
ネタニアフはまた、過去にイスラエルの指導者たちが行った歴史的な決断をあげて、それらと自らのなさるべき決断とを比較した。1948年のベングリオンによるイスラエルの独立宣言、1967年のレヴィ・エシュコルによる六日戦争、そして1981年のベギンによるイラク攻撃だ。前の二つはいづれもアメリカからの強い自粛要請を蹴って行われた。今回も、イスラエルはアメリカから圧力があっても、それを跳ね返して先制攻撃をするつもりだ、とナタニアフの鼻息は荒い。
当のアメリカだが、ネタニアフと会談したオバマ大統領は、イランに対しては武力以外の手段で圧力をかけるべきだと主張したが、それは表向きのジェスチャーで、陰ではネタニアフに反対しないというサインを送ったのではないか、ともっぱらの噂だ。Newsweek の最新号の記事は、オバマはなんだかんだ言っても、ネタニアフの行動を黙認する姿勢を示したと書いている。Obama Betrayed Ideals on Israel By Peter Beinart
もっとも、ネタニアフは、イランを直接攻撃する前に、ガザを徹底的に攻撃すると明言している。ガザはいまや、イランの前進拠点に化しているというのが、その理由だ。
ところで、ネタニアフからイランの核施設の破壊を指示された軍部は、完璧に破壊することは難しいと答えたそうだ。たとえ、核施設に重大なダメージを与えることに成功したとしても、イランは再び建設にとりかかるだろう。もぐら叩きになるというのが、軍部の率直な意見だ。
ともあれ、ネタニアフは、イランを先制攻撃する意図を、世界に向けて発信したかたちだ。(写真はネタニアフ:TIMEから)