JPモルガン・チェースが金融デリバティブの取引を通じて20億ドルの巨額損失を出したことをめぐって、大きな波紋が起きている。オバマ政権の金融規制当局のメンバーで、マサチューセッツ州選出民主党下院議員候補者のエリザベス・ウォーレン女史は、JPモルガン・チェースを激しく批判し、「巨大銀行がリスクの多い取引に血眼になり、失敗すると国民の税金で救済してもらい、ほとぼりがさめるとロビー活動を行って規制を緩めさせる、こういったやり方は許せない」と憤っている。
先の金融危機を踏まえて、アメリカでは金融機関への規制を内容とするドッド・フランク方が2010年に制定され、銀行が投機的取引に手を出すのを原則禁ずる方向性を示したが、運用の詳細については、まだ明確になっていなかった。今回の事態はその間隙をつくかたちで起きたものだ。
ドッド・フランク法では、金融機関による自己勘定取引とその他の投機的な取引を原則的に禁止するいわゆるボルカー・ルールが導入されたが、このルールの詳細が明らかにされていないことで、銀行経営者と立法化たちとの間に認識の相違があったといわれる。
というのも、JPモルガン・チェースのCEOダイモン氏が、これはリスクヘッジのために行ったものであり、ボルカー・ルールに違反していないと言明しているのに対して、ボルカー・ルール作成に参加した民主党上院議員のカール・レビン氏らは、JPモルガン・チェースの取引がボルカー・ルールに抵触しているとの見方を示して、対立しているからだ。
今回の損失は、JPモルガン・チェースの経営を揺るがすような問題には発展しないとみられているが、巨大銀行がいまだに、リーマンショックの教訓を無視して投機的な行動に走っているとの印象を、強く与えたことは間違いない。この事態を踏まえて、ボルカー・ルールをより厳密に定めようとの動きが強まるとともに、それを骨抜きにしようとする金融機関との間で、虚々実々のやり取りが展開されることになろうと、さっそくウォール・ストリートの路上雀たちを賑わしているようだ。(写真はAPから)
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