ミット・ロムニーが語らないこと

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賑やかだった共和党の大統領候補選びが一段落して、ミット・ロムニーが勝ち残ったことで、これからは、ロムニーとオバマの一騎打ちへと、局面が移っていく。いまのところ、オバマが一歩リードということらしいが、ロムニーにも勝機があるといった見方もあるようだ。両者の勝敗を決するのは、アメリカ国内の景気の動向だというのがその根拠だ。最新のデータで失業率が8.1パーセントと出たように、アメリカ国民は、相変わらずの不景気に苛立ちを感じており、その不満がオバマに向けられつつあるというのだ。

ロムニーの売りは経済対策だ。実業家として目覚ましい成果をあげた経歴を武器に、自分こそアメリカの経済を上向きにし、雇用を創出できる能力がある、オバマに任せていては、経済の回復は望めない、アメリカ経済が必要としている大統領は、ミット・ロムニーなのだ、と鼻息が荒い。

これに対して、オバマ陣営は、ロムニーの言っていることは嘘だ、と反撃している。ロムニーのマサチューセッツ州知事としての実績を見れば、それが良くわかる。ロムニー自身は、マサチューセッツ州知事時代のことを殆ど言わないが、それは彼の経済政策がことごとく裏目に出て、マサチューセッツの人々をひどい目にあわせたからだ、と暴露している。

ロムニーがマサチューセッツ州知事になったとき、ロムニーは雇用の拡大を約束した。しかし、実際に起こったことは、ロムニー就任時には全米で37位だった雇用創出数が、47位に後退したということだった。マサチューセッツよりも悪かったのは、オハイオ、ミシガン、ルイジアナの三州だけだ。オハイオとミシガンは自動車不況に直撃され、ルイジアナはカトリーナ台風に打ちのめされていた。しかしマサチューセッツ州には、特別な要因はなかった。だから、ずるずると後退したのは、ロムニー知事が無能だったせいだ、といわれても反論できないはずだ、とオバマ陣営は手厳しい批判を浴びせる。

一方ロムニー知事は、住民負担を拡大した。教育や職業訓練の予算を削り、受益者負担の名目で授業料を値上げし、奨学金をカットした。その結果生じた財政余力は、金持の減税財源に充てられた。つまり、ロムニーは、金持にやさしく、中間層や貧乏人には冷淡な人間だ、そういうわけである。

そんなロムニー氏にも、ひとつだけ誇ってよいことがある。それは州民全体を対象にした医療保険制度を立ち上げたことだ。その概要は、オバマケアといわれる医療改革メニューと非常に良く似ている。ところがロムニーは、自分がマサチューセッツ州知事時代に実施したこの政策については、どういうわけか口をつぐんでいる。

ロムニー氏が訴えている経済政策は、レーガンが主張したものと瓜二つといってよい。減税と小さな政府だ。共和党の候補者選びレースを争うなかで、保守派の動向を気に掛ける余り、政策が次第に右にぶれて、共和党の最小公倍数ともいえるこの無難な政策メニューセットに落ち着いたのかもしれない。(写真はAPから)

(参考) What's Mitt Romney Hiding in His Record as Governor By Paul Begala Newsweek





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このページは、が2012年5月 5日 20:39に書いたブログ記事です。

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