東電の居直りと原子力村の逆襲

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「東京電力」は、福島第一原発事故についての最終報告書をまとめ、20日に会見を開いて発表した。その中で東電は、津波に対する備えが十分ではなかったと認める一方、東電を含めた原発関係者は想定をはるかに超えた事態の発生を誰も予測していなかったため、事故を防ぐ手立てがなかったと述べ、この事故が基本的には天災だったと主張した。

また、事故後の対応については、「官邸が現場実態からかけ離れた要求を行い、無用の混乱を助長させた」などと、事故による混乱の責任の大半は政府側にあるかのような言い方をして、自らの責任を極力小さく見せようとする、居直りともいえる態度を示した。

例の撤退問題についても、東電は「必要な措置に当たる要員は現場に残し、命がけで対応する覚悟だった」と説明し、東電の清水社長が全面撤退を申し入れてきたと受け取った政府の主張には根拠のないような言い方をしている。

そんな言い分をまともに受け止める人の方が少ないのは言うまでもない。当の清水社長は、その後長い間雲隠れして、事故の対応には何もしなかったとされているのだから、今更なにをいうか、と受け取られても仕方があるまい。

報告書の概要を説明する幹部の映像をテレビで見たが、そこには、日本国民を深刻な危機に陥れたことについての謙虚な反省の気持ちが伺えないどころか、いわゆる原子力村の利害を死守せんとする不敵な意図さえ感じさせるものさえあった。

東電がこんなに強気になっているのは、根拠のないことではないのだろう。先日は、大飯原発の再稼働が決まり、脱原発の流れが変わりそうな気配が感じられた。それを踏まえて、伊方原発など、それ以外の原発の再稼働に向けての、原子力村の攻勢も始まっているようだ。そうした動きが、野田民主党政権の、支持とは言わないまでも、暗黙の了解のもとに行われているらしいことは、国民の誰もが感じていることだ。東電は、こうした微妙な空気の変化を敏感に感じ取りながら、今回のこのような発表に踏み切ったのであろうと思われる。

一時期、脱原発の世論が高まったのは、菅内閣のもとで首相自らがそれにコミットし、関係閣僚もそれに引きずられる形で、脱原発のポーズをとったからだ。ところが首相が野田さんにかわると、自民党ほど露骨ではないが、原発再稼働の必要性が公然と言われるようになった。これで原子力村が勢いづき、原発再稼働路線を一気に盛り返そうといきり立っていることは想像に難くない。今回の東電の態度は、そうした空気を反映したことと思われるのだ。

先日の新聞には、政府の原子力委員会が、原発再稼働に向けて、ことが再稼働に有利に運ぶように、資料操作していたということが明らかにされた。彼らなりに必死なのだということが伝わってくる内容だった。

原子力村のメンバーは彼らなりに、政治状況を読み取って、どのようにしたら日本に原始力を再定着させることができるのか、真剣になっているのに違いない。そんな彼らを最も勇気づけているのは、野田さんであることは、どうも間違いないようだ。

野田さんは、今回の原発事故が起きた直後から、東電に対しては理解を示していると報じられてきた。そんな野田さんが、自分の政治生命をかけると公言している消費税の増税について、是非とも自民党の協力を得ようと、自分の党の分裂まで覚悟してすり寄っているのは、国民すべての見ているところだ。

野田さんは、消費税の増税という目的のためには、自民党に対してどんな譲歩でもするような雰囲気だ。そんな譲歩の中でも、原発の再稼働は野田さん本人の主義と大層意義の離れたことではない。十分に強調できる余地のあるイシューのようだ。

どうも、そんな雰囲気が漂っていることは間違いない。東電が自分の責任を棚上げして菅前首相を悪者にし、また関西電力の社長が40年で廃炉という政府の方針を公然と批判したのは、彼等がいまの民主党政権の原発政策を甘く見ていることの現れだ、と受け取れるのだ。(写真はTIMEから)





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このページは、が2012年6月20日 21:43に書いたブログ記事です。

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