日本ついに核武装の道?

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「日本ついに核武装の道」 こんな見出しを掲げたのは「朝鮮日報」など韓国の各紙、先日(6月20日)成立した原子力規制委員会設置法の付則に、原子力の利用目的として「安全保障」の文言が盛り込まれたことに対して反応したものだ。中には、日本が核武装するなら韓国も対抗して核武装すべきだ、と気の早い主張をするものもいる。また、民間のみならず韓国政府も、日本が核武装国に転換する可能性は低いと判断しながらも、日本の動きを注視している、と言明した。

事の発端は、21日付の東京新聞の記事だったらしい。この記事は、附則の中にある「原子力利用の安全確保は国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的としている」という条項を紹介していたのだが、この「安全保障」にかかわる表現が、原子力(核)の軍事的転用への道を開いたという疑惑を呼び起こしたわけだ。

波紋が広がると日本政府は座視できないと考えたのか、藤村修官房長官が21日午前の記者会見で「原子力を軍事的に転用するという考えは一切持っていない」と鎮火に乗り出たし、細野豪志原子力発電所担当相兼環境相も「新しく盛り込まれた『安全保障』は核武装をするという意味でなく核拡散をしないという措置」だと述べた。

もし藤村長官らの弁明が日本政府の公式の立場なら、わざわざ誤解を招くような表現は入れるべきではない、と今日(6月23日)の毎日の社説が批判した。その上でこの社説は、「安全保障」部分の削除を求めている。

なぜこんな騒ぎになったのか。「原子力規制委員会設置法」を制定するに際し、当初の政府案にはこのような規定はなかったのが、民自公の協議で議員立法することとなったところ、自民党の主張によって付け加えられたということらしい。この法案はしたがって、提案からわずか4日という猛スピードで成立した。

原子力基本法は文字通り日本の原子力政策の基本を定めている。その基本的な理念は、原子力の平和利用に徹し、核兵器は持たないというものだ。今回の附則は、この基本理念に疑いを差し挟む余地を残すような表現になっているわけだが、そんな重大な事柄を、原子力委員会設置法という法律の中で、しかも附則と言う形で忍び込ませようとするのは、たしかにフェアなやり方ではない。

自民党内にはかねてから、日本が原子力発電を通じて、核開発可能な能力を示すことで、潜在的な抑止力になるとする考え方が根強く存在している。韓国側が今回過剰ともいえる反応を示したのは、日本国内の右翼的勢力が、この規定を盾にとって、将来核武装に乗り出すのではないか、との不安があるからだろう。

日本国民にしても、こんな大事なことが、ろくな議論もなく決まったことについては、大きな懸念を感じる人が多いのではないか。隅っこの方で、こせこせとやっていないで、公明正大な議論をするべきだ。





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このページは、が2012年6月23日 19:10に書いたブログ記事です。

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